第20章 未来への扉
…あ。
思いもよらず、嬉しい気持ちになる俺。
『この間さ、夏希が海君と帰った後、
俺、クロに言っちゃったんだ。』
『?』
『夏希は俺より
クロのことが好きなんじゃないか、って。』
『えぇっ?』
『いや、ほんと、ごめん。
嫉妬で頭がおかしくなってたんだと思う。
だってクロ、俺らと同じ年なのに、
大人っぽいし。』
『そんなの、
今に始まったことじゃないじゃん。
高校の時からでしょ。』
『そうだけどさ。
俺よりクロのほうが、夏希を
楽しませてやれるんじゃないか、って。
…休みも、あうだろうし。』
『もーりーすーけー!』
夏希が、俺のおでこを
グーでグリグリと押してくる。
『さっきも言ったけど、
高校の頃から、
もりすけのこと好きな気持ち、
全然かわってないの!
大人の男が好きなら、最初から
もりすけに恋しないし。』
『…それ、ちょっとカチンとくるけど?』
『だってそうでしょ?
大人っぽい人がよければ、最初から
クロや海君のこと、好きになるって。
私はもりすけの、頑固でまっすぐで
ハッキリしてて努力家で、しっかり者で
あと、でっかすぎない所が好きなの。』
『…最後のは、余計じゃね?』
『ううん、そこも大事。
見下ろされてなくて落ち着く。』
『…ふーん、まぁいいや。』
『クロがもりすけに
何て言ったかは関係ない。
もりすけがどうしたいか、聞かせて。
背伸び…身長じゃないよ、心だよ?…
しない、もりすけの気持ち。』
『俺の、気持ち?』
『うん、もりすけの、気持ち。』
『夏希が大好き。結婚したいくらい。
そのためにも、仕事、頑張りたい。
でも、俺、不器用だからさ、
全部いっぺんに満足にやれなくて、
自分に腹がたつんだ。
…それでこの間は夏希に八つ当たりした。
あのままだったらきっと俺、
もっと自分を責めてたと思う。
…ちょっと時間おいたから、今、冷静に
夏希に気持ちを言えるんだよな。
だから、毎日より、少し時間おいた方が…』
『クロの意見だから、じゃなくて、
もりすけ自身が、一人の時間を大事にしたい?』
『…ほんとは、そばに、いたい。』
『(笑)言ってること、逆。』
『ほんとだな(笑)どーしたらいいんだろ。』
『結婚、しちゃう?』