第20章 未来への扉
静かに、唇を重ねた。
大事だから、壊してしまわないように。
気持ち的には、
めちゃめちゃにしたいほど
夏希のことが欲しいけど、
今は、
"ごめん"と"大事"の気持ちを
伝えたいから、そっと。
そっと。そっと。
…うすはりのワイングラスを
あわせるように。
まるで初めてキスした時のように、
優しく、いとおしく、大切に。
唇が離れ、
夏希の両手が俺の背中を抱き締める。
耳元で聴こえる、夏希のささやき。
『…もりすけの気持ち、充分、わかったよ。
今度は、私の気持ち。』
俺の体の下を潜り抜け、
ベッドにペタンと座ったまま、
シャツのボタンをはずしだす。
『ずっと、大好きなの。
いつもは言いたいこと言えるのに、
好きすぎて、時々、
嫌われたくないな、とかって思うと、
どうしていいかわかんなくなる。
友達のままだったら良かったのかな、
仕事にヤキモチ妬いたりするなんて、
彼女失格だな、って思ったりもして…』
シャツのボタンをはずすと、
今度はベッドサイドに立ち上がり、
一枚ずつ、脱いでいく。自分で。
…俺が脱がせたい、と思うのに、
夏希の言葉が気になって、動けない。
『物分かりのいい大人の彼女には、
なかなかなれないけど…
もりすけのこと、大好きなのは、
高校の頃から、今もかわらないの。
また怒らせちゃうこともあるかもしれない。
だけど、大好きなの。』
下着姿になった夏希。
『…連絡とらない間も、会いたかった。
今日、一緒に過ごせて嬉しかった。…
欲張りでワガママで、
素直じゃなくてごめんね。
だけど、私の全部、もりすけのものだよ。』
…先に、言われちまったな。
それ、俺が言いたかった。
好きすぎて、
どうしていいかわかんなくなる。
独占したくて…彼氏、失格かな、って。
クロみたいに大人の男には
まだまだなれないし…
イヤな思いさせてしまったけど、
俺だって、大好きだ。
ずっと会いたくて。
今日はホントに楽しくて。
もっと早く、
こんな日を過ごせばよかったな。
いっぱい、我慢させてごめん。
でも、
夏希のこと、大好きなんだ。
俺の全部で、夏希を愛するから。