第20章 未来への扉
新宿に戻ったのは、夕方6時半。
まだまだたっぷり遊べる時間だ。
『どうする?腹、減った?』
『ううん、あんまり。
お昼、結構、食べたしね。』
『…んー、』
『どこいく?』
ぶらぶら歩くふりをして、
俺の足は、確実にソッチを目指していた。
『…ダメ?』
ラブホ。
『…いいよ。』
よかった。
もう、二週間以上、触れてない。
気持ち、伝えさせて。
部屋に入る。
荷物を置くと、すぐに抱き締めた。
『ちょっと、もりすけ、
シャワー、浴びさせて。
たくさん歩いて、汗かいちゃった。』
『ダメ。』
『もりすけ?』
『すぐ、ほしい。』
『…珍しいね、いつも、
きちんとしたがるのに。』
『きちんとは、もうやめる。』
『…どうして?』
『先のこととか考えるより、
今、目の前の夏希を大事にする。』
『…嬉しいけど…』
『クロに言われた。
まずは恋愛、楽しめって。
正しいだけじゃダメだって。』
『…私も言われたよ。
もりすけは私のこと大好きなんだから、
もっと本音やワガママぶつけて
たっぷり甘えろ、って。
もりすけに、自分も愛されてるっていう
手応え、感じさせてやれ、って。』
『…うん、愛を実感したい。』
『じゃ、シャワーを…』
『ダーメだって。』
『そこは、ちゃんとしようよ!』
『じゃ、一緒に入る。』
『…ほんっと、狼男だよね。』
『もう狼に変身したから。
人間のルールは俺には通用しない。』
そのままベッドに押し倒す。
『お願い、シャワー!
ね、わかったから!一緒に浴びよ!』
…もう、遅い。
とにかく、今、抱きたい。
この10日近くの間、
どれほど夏希に会いたかったことか。
どれだけ反省したことか。
ケンカしたって会いたいと思うんだ。
これを"好き"と言わずに何て言う?
『夏希、好きだ…すっげー、好きだ。
ケンカしてても、"会いたくない"なんて
一度も思わないんだ。
気になって気になって、仕方ないんだ。
夏希のことを好きすぎて、
ヤキモチ妬いた。ごめん。
会いたかった。もっと上手に
夏希を愛せるようになるからさ…』
組み敷いた夏希を見下ろしながら
一気に喋る。
俺を見上げていた夏希の瞼が
静かに閉じた。
『キス、して。』