第20章 未来への扉
日曜。
朝七時ちょっと前、
新宿駅に到着。
クロの指示通りの場所に着くと、
ほぼ同時に夏希もやってきた。
『…おはよ。』
『おはよう。久しぶりだな。』
『日曜なのに、仕事、大丈夫?』
『うん。今日、幸い、仏滅でさ。
全部、片付けてきた。』
『でも、どうしてこんな朝から新宿なの?』
『さぁ…え?夏希も知らねーの?』
『もりすけも?私はてっきり、
もりすけの伝言をクロが伝えたんだと…』
『いや、俺も、
クロに言われた通りに来ただけ。
…あのさ、』
この間はごめん、って謝ろう思った時、
クロが来た。
…謝りそびれた…
『よぉ。
まさかもうケンカしてんじゃねーだろな?』
『違うよ(苦笑)』
『…クロ、これから、どうすんだ?』
『これから?はい、コレ。』
クロから1枚づつ、
紙…チケット?…が手渡される。
『…これは?』
『"紅葉と、うまい昼飯バスツアー"。
俺からのプレゼントね。
この間より、きっとはるかに見頃だぜ。』
…夏希と二人で紅葉狩り?
『はい、乗り場、あっち。
いってらっしゃい。
夕方には戻るツアーだからさ、
夜はたっぷり、
濃厚な仲直りHでお楽しみ下さいませ♥』
バスガイドみたいな手付きで、
集合場所の方を指す。
『クロは?』
『俺?行くわけねーじゃん。
お前らの担任じゃねーんだから。
あとは二人で仲良く、な。
ほんじゃ。
…ふわぁ、俺、帰って
もうひと眠りすっから。
ケンカしても電話すんなよ!』
ヒラヒラと手を振って帰っていく。
『…いいのかな、こんな、
気を遣ってもらって…』
クロは、昔からそうだ。
試合でも。
俺がレシーブしやすいように
コースを絞ったり、
ワンチしたり、
他のやつらに指示出したり。
木兎さんみたいに
自分で決めに行く役割じゃない。
俺らを活かしてくれる人。
みんな、
クロの一言で盛り上がり、
クロの一言で引き締まり、
クロの一言で伸びていく。
チームの脳は研磨だけど、
チームの心臓はクロだった。
『仲直りしてこい、っていう
主将の指示なんじゃね?』
『…そうかも。』
『従うか。』
『うん!』
…そんなわけで、
夏希と初めての遠出デートは
観光バスに乗っての紅葉狩り、になった。