第20章 未来への扉
クロと海君は、黙って聞いてる。
『最初に約束しただろ、
何でも話そう、我慢しないって。』
『我慢してんのは、もりすけでしょ。
私と争いたくないから、いつも
耳障りのいい言葉で治めてる。』
『だって、
遅れるのも遊びに行けないのも
俺が悪いんだろ!』
『…じゃ、昨日は?
物わかりのいい顔して
"行ってこい"って言ったんだから
楽しんでくることに文句言わないでよ。
私がもりすけがいない所で楽しむのが
イヤなら、行くなって言えばいいし。
それか、仕事休んで一緒に来れば?』
『行きたかったよ!
でも仕事だからしょうがねーだろ!』
『…ほらでた。仕事、仕事。
いっつも、それ。仕事、仕事。
わかってるけど、
断られるたび、軽く傷つくんだからね。
だから、今日も誘わなかったんだもん!』
…終わるとは思えない、無限ループ。
地獄の渕に立った俺たちを
現実に引っ張り戻すように
クロが、手を叩く。
『はいはい、そこまで!
今日はもう、お前ら、話さない方がいい。
夏希、しばらく、夜っ久んと連絡、取んな。
二人とも、頭冷やせ。
海、夏希を駅まで送ってやって。』
『なんで海君が夏希を送るんだよ!
てか、俺は、冷静だしっ!』
『(笑)夜っ久ん、冷静って日本語、
使い方、間違ってんぞ。
夜っ久んがそんな状態じゃ
夏希、任せらんねーから。
海、行って。
ビール代、夜っ久んが払うってさ。』
目も合わさないまま、
夏希は
海君と出ていった。
テーブルに、男二人。
こじゃれたカフェに似合わない、
異様な組み合わせ。
クロは、何も言わない。