第20章 未来への扉
二次会の会場があるビルの3階。
エレベーターを待ってられなくて
階段を走って上がった。
分厚いドアを開くと
薄暗い店内に、賑やかな音楽、
ザワザワギャーギャーと、人の声。
夏希は?
…いた。
直井コーチとクロ、海君と研磨、福永、
そして夏希の6人で飲みながら、
楽しそうにテーブルを囲んでる。
『あ、夜久さん、来た!』
『や~くさぁんっ!』
リエーフや虎達は、
福永の嫁さんの友達をナンパ中みたいだ。
そっちに片手だけあげて挨拶し、
一直線に、夏希のもとへ。
『お待たせ。』
『やっと来たか。
これで俺も見張り番から開放だな。
どれ、俺もナンパチームに…』
『クロ、乾杯くらい、しようよ。』
…研磨がマトモなことを言う。
さすが、研磨。俺たちの脳ミソ。
走ってきたから、
本当に、喉が渇いてた。
ビールを一気に飲み干す。
『駆けつけで、飲むなぁ。』
『だって、すっげー走ったから。』
『はいはい、
夏希がナンパされんじゃねーかって
心配だったんだろ?
幸せだなぁ、夏希。』
『クロ、からかうなよ。』
『夜久、そういえばさ、』
飲んでも表情の変わらない海君が言う。
『明日さ、みんなで
紅葉狩り行こうかって話してるんだけど。
どう?行ける?』
『明日?…仕事だなぁ。』
『…ほらね、海君。
だから誘わなくていいって言ったのに…』
…何だ?その言いかた。
夏希の言葉にちょっとカチンとくる。
それを感情に置き換える前に、
クロが言った。
『じゃあさ、夏希、連れてっていい?
俺がちゃんとエスコートするからさ。』
…夏希を見る。
誰の顔を見るでもなく、
グラスを揺らしてる。
行きたいんだろ?
でも、
俺の前でそれを言えないんだろ?
海君が俺を誘わなければ、
お前、俺に黙って行く気だったのかよ?
自分で、嫌な気分になる。
言いたいことはいっぱいあるけど…
『なに?夜っ久ん、
もしかして俺のこと、信用出来ない?
大丈夫、俺、仲間の女、
横取りするほど困ってねーからさ。』
ニヤリと笑うクロは、やっぱり賢い狼だ。
俺が『ダメだ』と言えない流れになる。
…行けない俺が悪いんだし。