第20章 未来への扉
『夜久君、あとは私がやっておくから、
二次会、早く行ったら?』
福永の披露宴のあと。
みんなと二人を二次会に送り出して
事後処理に戻ろうとした俺に
担当プランナーの早瀬が言う。
『どうせ遅くまでやってんだ。
仕事はちゃんとしてくから。』
『ダーメだって。
夏希ちゃん、とられちゃうよ?!』
『…なんだよ、それ。』
『わかんないかなぁ。
彼氏はかまってくんなくて、
逆にまわりに、
懐かしくて親しい男の人が
たくさんいるんだよ?
みんな、酔ってるんだよ?
寂しさに付け入られても文句言えないよ?
しっかり掴まえとかないと。』
『んなこと、あるわけねー。
ちゃんと日頃からかまってっし。
寂しい思いとか、そんなこと…』
…させてない、って、言い切れるか?
『夜久君、』
早瀬が、俺の背中を押す。
『普段の仕事は代わってあげらんないけど
今日の仕事は私一人で充分。
夜久君の同僚としてじゃなくて
夏希ちゃんの友達としてのお願い、
ならきいてくれる?』
…早瀬に借りは作りたくねーけども…
『あぁ、もう、バッカじゃないの?
あたしに貸し借り関係ないから!
揉めてから落ち込まれる方が
よっぽど迷惑だってわかんないかなぁ?』
考え、バレてる。
全面的に信頼できる、仕事のパートナー。
…女に見えないのが残念だ。
夏希に似てんのになぁ。
男がいないのも、不思議だ。
悪いヤツじゃねーのにな。
『あぁ、なんかムカつくこと
考えてるっぽい顔してるぅっ。
もう、さっさと着替えて、
今日も全速力で行ってください、
この、鈍感男!』
…あ?ちっと突っ込みたい言葉もあるけど…
とりあえず
『サンキュ、早瀬。今度、男、紹介すっから!』
『余計なお世話!』
…急いで、着替える。
そして、今日もまた、走り出す。
二次会へ…というより、夏希のもとへ。
誰より大事にしてるつもり。
俺の気持ちは伝わってるはず。
寂しい思いなんか、させてない。
信頼してるから、他の男…ましてや
かつての仲間…に口説かれるなんて。
そんなこと、ありえねー。
ありえねーよな、夏希。
同じ事を
ずっと繰り返し考えながら、
走った。
俺はいつだって
夏希のために
全力、全速力、だ。