第20章 未来への扉
『夏希!』
『もりすけ…早かったね。
仕事の途中じゃないの?大丈夫?』
『うん、明日でいい仕事だったから。』
『そっか…何か飲み物、頼んだ?』
あ、そうだ。なんか、頼まないと。
メニューボードを見る。
『ええと…』
あのさ、なにを頼んでいいかわかんねー。
言い訳する訳じゃねーけど、
日頃は、コンビニのコーヒーで充分だからさ。
夏希が察してくれる。
『走って来てくれたの?暑そうだから…
アイスカフェラテのトールで
いいんじゃない?頼んでこようか?』
『いい?』
ん、と言って夏希がカウンターに向かう。
上着と鞄を横の椅子に置いて、
チラリとスマホを見ると
早瀬からLINEがきてた。
"会えた?"
短く、レス。
"うん"
すぐに返事が来る。
心配してくれてたらしい。
"頑張れ"
"おぅ。"
…スマホを鞄に入れる。
間もなく、
カップを手にした夏希が戻ってきた。
『はい、アイスカフェラテ。』
『サンキュ。』
緑色のストローをくわえて
キューーーーーっ、と飲む。
思ってたより喉が渇いてたみたいで
一気に半分、なくなった。
あとは、ほとんど氷。
『ほっぺ、ひっこんでるよ。』
頬杖をついて
クククッ、と笑った夏希。
よかった。笑顔だ。
『…で、なんだよ、直接伝えたいこと、って。』
『うん…』
もう残り少ないカップに目を落とし、
それから、
弱い視線で俺を見る。
『…別れてきた。』
え?
『彼と…別れてきた。』
『…どっちから?』
『私から。ちゃんと、言った。
信用できない人とは一緒にいられない、って。
どうぞ新しい彼女のところへ行って、って。』
…えらいハッキリと…
『そしたら彼が"ヤキモチか?"って言うから、』
…上から目線な男だな…
『なんかますます、ズーンって気持ちがひいて、』
…だろーな。…
『"もう、私も気になる人がいるから、
残念ながらあなたに妬くキモチがないの"
って言ったら、』
…え?…
『彼の方が、焦ってた。』
…そりゃ、そうだろ!…
『で、お互い、新しい恋、頑張ろうね、
今までありがとう、さようなら、って。』
…また、潔いほど、バッサリだな…
ハッキリしてるのが
夏希のいいところだけど。