第20章 未来への扉
あれから、
何度か一緒に飲みに行った。
いつも、早瀬経由で話が来て、
いつも、早瀬が一緒で、
いつも、早瀬と夏希が先におちあって、
後から俺が合流した。
多分、俺がいない間、
早瀬に彼のことを相談してる。
俺が
『自分でカタつけろ。』って言ったから
俺には話さないし、
俺と二人でも会わないんだろうと思う。
早瀬も、それに関しては
俺に、何も教えてくれなかった。
すっかり仲良くなった二人の結束は、
ガッチリ、固いようだ。
この間、夏希に言われた
『正しすぎて、腹が立つ。』
という言葉が心に突き刺さって。
…もっと、
たまにはちょっとズルいくらいでも
いいのかもしんねーけど。
けど、俺は、ちゃんと、していたい。
ちゃんと愛するためには、
ズルいことはしたくないんだ。
夏希がちゃんと俺の彼女になったら
ちゃんと、まっすぐ、愛するから。
…だから、早く
俺んとこ来いよ。
その言葉を胸のなかだけで
何度も何度も繰り返しながら、
いつも、
早瀬と夏希と俺と、
3人で会っていた。
俺の心の中にはいろいろ思いがあるのに、
そんなことは全く顔にも言葉にも出さず、
スッゲー普通の友達、みたいな顔で。
…ほとんど、意地だ。
略奪じゃないし、
浮気でもないぞ。
ちゃんと、彼氏と別れてから
付き合い始めたんだから。
誰にどう聞かれても
堂々とそう言えるように。
ズルい戦いは、したくない。
そのかわり、
チャンスがきたら
必ず、拾えるように。
『この年だから、そろそろ結婚したい』
と言っていた夏希。
だから、
付き合うなら結婚を前提にできるよう、
俺は俺のやるべきことを
きちんとやろうと決めていた。
指輪も買ってやりたいし、
結婚式も、夏希の希望は
出来るだけ叶えてやりたい。
一緒に住むなら、
賃貸より、マンションか家を
買うことも選択肢に入れたい。
そのためには、まず仕事。
ちゃんと結果を出して、
今のうちに貯金もして。
…なんの根拠もないけど、
きっと、俺と夏希は、
もう1度つきあう、きっと。
だって、
ここで…結婚式場で…
このタイミングで
…彼氏と別れを考えてる時に…
出会ったんだから。