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ウェディングプランナー(R18) Hi-Q

第20章 未来への扉



…駅まで、送っていった。
とりとめのない雑談をしながら、
公園の中にある歩道を歩く。

薄ぼんやりとした街灯の灯りと
真っ白く冴えた月明かりが
繁った木々にあたり、
複雑な影を作っていた。

闇と、影と、光。
俺の心のなかに
同じようなまだら模様が浮かぶ。

高校の頃だったら、
多分、手を繋いだだろう。
もしかしたら、
木陰でキスしたかもしんね。

でも、
今は、
大人の理性が働く。

今、ここで触れてしまったら
夏希も、彼を裏切ったことに、
…彼と同じ事をしたことに、なる。

酒の勢い、とか
彼氏への仕返し、とか

そんなんは、ダメだ。

気持ちに任せちゃ、ダメだ。

夏希は、傷ついてる。
俺が、冷静でいないと。

少し酔った夏希が
大きな歩幅で跳び跳ねながら歩く。

『おい、転ぶぞ!』

『そしたら、もりすけ、助けてくれるでしょ?』



『甘えんな。
お前、まだ他の男の彼女だろ。
触れるわけにはいかねーよ。』

…少し前で立ち止まり、
こっちを振り返る夏希。
逆光になった月明かりが眩しくて、
表情は、見えない。

大きな声。

『…もりすけの、バーカ、バーカ。
カッコつけ!意気地無し!
…奪ってくれたら、いいのに。』

『意気地無しはそっちだろ!
自分だけ傷つかずに
あれもこれも守ろうとしやがって。
人になんとかしてもらおうと思うな。
自分でちゃんとカタつけてこいよ。』

『…気持ちに火をつけといて、
突き放すなんて、ズルいよ…』

…わかんねぇのかなぁ。
弱味につけこんで口説いた、
みたいになるの、ヤなんだよ…

『ズルくて、わるかったな。
でも俺、つきあうならちゃんと
堂々とつきあいてーから。』

『…昔から、だよね。
そういう真っ直ぐなところ。
…たまには例外もあっていいじゃん、
って思うけど、
それが、もりすけのいい所ってことも
知ってるから。
真っ直ぐで、嘘つかないから
信用できるんだもんね。
正しすぎて、腹が立つ。
バーカ、バーカ!』

大人になったんだな、と、思う。
酒の力がなければ、
きっと、こんなことは言わない。
ハッキリと、でも、ポロポロと
本音を漏らす夏希が、かわいく見えた。

言いたいことを、言ってくれよ。

言わずに終わった前みたいな別れ方は、
もう、したくないからさ。



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