第20章 未来への扉
ショーの後、うちのレストランで
ちょっとした打ち上げがあった。
…今回のショーは、
これをきっかけに、
うちの会場を挙式の候補に考えてもらう、
というのが一番の目的。
だから、
打ち上げも、彼と両親は同伴可能。
料理も大事なクチコミポイントだから
軽食ビュッフェとはいえ
なかなか力の入ったメニューが並ぶ。
俺は関係スタッフではないから
直接、中には入らなかった。
前を(わざと)通ったときに
チラッと見た限りでは
やっぱり夏希は一人で参加してて、
横にはさりげなく早瀬がいる。
…早瀬と目が合う。
なぜか、俺に向かって
"了解!"という顔で頷いた。
なんだ?
何も頼んでねーぞ?
まさか俺の代わりに、
勝手に付き合う交渉とか
するつもりじゃねーだろな?!
…彼氏のリサーチくらいは
してくれてもいいけどな…
打ち上げもおひらきの時間が近くなり、
支配人の挨拶が始まったのを見計らって
事務所に駆け込んできた早瀬。
『夜久君、仕事、終わりそう?
夏希ちゃんと、この後、飲み行くよ。
あたし、途中で帰るから、
彼氏のことは、自分で聞いて。
その方が、先を考えやすいでしょ?』
なにっ?!
早瀬、Good job❇
『早瀬、でかした!
ホント、お前はこんなに気も効くし
仕事も出来んのに…ァィタタタ!
髪、引っ張るな、バカッ!』
『"何で男がいねーんだろな"は
聞き飽きた!余計なお世話!!
むしろセクハラ!!!
…先、行っとくから。
場所は…決めたら連絡するね!』
夏希と再会して、
まだ、まる1日。
何年もの空白の時間を
取り戻すことが出来るのだろうか。
机を片付け、
歯を磨き、
汗をかいてないかチェックして
香水を、ほんの少し。
私服に着替えて
財布の中身も確認して、
事務所を出た。
振り返ってみる。
暗くなり始めた空に
ライトアップされた白い建物。
ここは、俺の仕事場。
そんで、
幸せな人達が集う所。
…俺ももちろん、
結婚するときは、ここで。
信頼できる仕事仲間に、
その1日を任せたい。
次に付き合う人は
結婚を考えたくなるような人を。
そう思う年齢だ。
夏希との再会は、
その始まり…に、なるだろうか?