第20章 未来への扉
『知り合い?』
そう聞かれて、
どう答えようかと一瞬、考えた時、
『モデルの皆さん、お疲れ様です!
衣装、脱ぐ前に
最終チェックさせてもらいたいので
集合して下さい!』
衣装部の声。
『夏希、明日、俺も見てっから。頑張れよ。』
『夏希ちゃん、また後でね。』
『うん。』
と言った夏希の返事は、
俺に対して?
それとも早瀬に対して?
どっちともとれる笑顔を残し、
夏希は向こうへ行った。
その場に残った俺に
早瀬がニヤニヤしながら言う。
『"俺も見てっから、頑張れよ"って、
ただの知り合いじゃないっぽいセリフだよね。』
『…』
そうだよ、
とも
違うよ、とも言えない俺に
『見る?』
早瀬が
黒いバインダーを差し出した。
中には、
お客様のカウンセリングシート。
別に、珍しいもんじゃない。
俺もいつも、お客様の情報を
こうやってまとめて共有してる。
名前とか
連絡先とか
勤務先とか
そんなものは、
一切目に止まらず。
『その他』の欄…
早瀬の文字で一言
『挙式予定➡未定』
未定。
未定、とは?
相手はいるけど未定、なのか。
相手がいなくて未定、なのか。
『…相手はいるけど未定、らしいよ。』
ムカつくほどピッタリのタイミングで、
ムカつくほど聞きたくない情報を
教えてくれる早瀬。
『…ふーん。』
『でもさ、ここだけの話、』
『…なんだよっ?!』
『悩んでるみたい。』
『何を?』
『別れるかも、なんだって。』
ええっ??
マジか?!