第19章 Marry me !!
赤葦の出発の日の二人のことは、
俺も忘れられない。
絶対に
人に迷惑をかけない赤葦が、
わがままを言って
部屋から出てこなかった。
『あと少しだけ、
あと一分だけ…』
赤葦も、
小春ちゃんも
きっと、
心が引き裂かれる思いだっただろう。
それは、
部屋の外で心配していた
俺やエリやアッキーも同じだった。
(木兎は寝てたけど、ま、それは想定内 笑)
結局、タクシーを帰して
俺とエリがホテルまで送った。
エリは、
小春ちゃんの気持ちを想像して
たまらなかったに違いないし、
俺は、
男同士、弟みたいな赤葦の気持ちが
痛いほどわかった。
"残される方が辛いんだから、
残して旅立っていく自分が
未練がましい態度をとってはいけない" と
"先輩の前だから、
これ以上、
迷惑をかけられないし、
弱さを見せてはいけない" と
でも本当は、
"もしかしたら
もう、会えないかもしれないから
しっかり心に刻んでおきたい" と
"勝手を言って旅立つ自分を
許してほしい" と
…そう思っていても
言葉に、態度に出せない
赤葦の気持ちと立場。
わかるのに、
どうしてやることもできなくて。
だから、
俺が先に、エリにキスをした。
気持ち、
わかるから。
だから、
お前もちゃんと
ケジメつけろ。
心、残すな。
そんな俺の気持ちを、
エリも、
そして赤葦も
ちゃんとわかってくれて、
赤葦と小春ちゃんは
朝焼けのなか、
サヨナラのキスをして、離れた。
帰りの車の中で、
小春ちゃんが
『エリさんみたいにカッコよく、
泣かずに見送りたいと思って
泣くのを我慢した』と言ったのには
ズッコケたけど。
エリだったら、
東京地方に大雨洪水注意報が出るくらい
泣いたはず(笑)
カッコいい女みたいだけど、
ホントは寂しがりで泣き虫。
小春ちゃんとは正反対だけど、
二人ともやっぱり、
彼を一途に思う、かわいい女なのは
同じなんだよな。