第19章 Marry me !!
…全く予定外の展開だったから、
何から話したらいいかわかんなくて
とりあえず、
バーに立ち寄ることにした。
俺は、ジンライムを。
エリちゃんにはモヒート。
さっぱりと乾杯したかったから。
カチン、とあわさったグラス。
中の氷も揺れて、涼しい音がする。
そのクールな音と、
二つのグラスに沈む緑色が、
気持ちを落ち着かせてくれた。
『さっきはありがとう。びっくりした。』
『俺も。
連絡しなくちゃな、って思ってた矢先に、
夜の街でバッタリとかって、ビビる!』
『ヒーローみたいでカッコよかった~。』
『…勝手に彼氏面して、ごめん。
でも、あれが、俺の返事のつもり。』
『…私、うぬぼれていいのかな?』
『エリちゃん、俺と、つきあって。』
パアッ。
ほら、さっきと同じ。
ハイビスカスが咲いたみたい。
『さっき、職場の人の前で
彼女って紹介してもらえて
すっごーーーく、嬉しかった!』
『でもさ、なんであんなとこに
一人でいるんだよ。危ねぇだろ?』
『会社の飲み会の帰り。
女子チームはみんな
今からナンパされに行くっていうから
あたしはもう帰ろうと思ってたとこだった。』
『一緒に行かねーの?』
彼女は、ビックリした顔で言う。
『だって私、
木葉君のこと、好きって言ったでしょ?
なんでナンパされに行かなきゃなんないの?』
あ。
彼女は、真っ直ぐだ。
派手に見えるから
勝手に遊び人のイメージを持ってたけど、
すごく、真っ直ぐで正直なんだな。
『そっか。でも、気を付けろよ。
エリちゃんが一人でいたら、
必ず男は声かけるぞ。面倒くさいだろ?』
『…わかった。だけど、
海で光太郎君がナンパしてくれたから
木葉君と出会えたし、
今日もおっさんに囲まれてたから、
木葉君が助けてくれたわけだし。
私達、ナンパ男達のおかげで
つきあえるんだもんね。
ちょっとだけ、感謝しちゃう。』
…見た目よりずっと、
一途なのかもしんねーな。
その気持ちを俺に向けてくれるなら、
俺も、遊びじゃなくて、
きちんと、応えたい。
『な、エリって呼んでいいか?』
『いいに決まってるじゃん…秋紀。』
…やっと、恋が始まった気がする。
『エリ、この後、どうすっか?』
『うーん、そうだねぇ…』