第18章 誓いの言葉
『おっちゃん…これ、おっちゃんが自分で
あかーしに渡してやればいいじゃん?』
『そうしたい気持ちはヤマヤマだが
私にも立場ってもんがあってね。
表立って彼らを祝福するわけにはいかんのだよ。』
『親父なのに?』
『私は京治にとって
“父ではなく社長”らしいからな。』
『カーッ!どっちも素直じゃねーなぁっ!!!』
『コータローの素直さがうらやましい(笑)』
『渡せばいいんですか?』
『…赤葦建設を辞めるつもりなら
近いうちに会社に顔を出せ、と
伝えてくれるとありがたい。
仕事の話なら、アイツも聞くだろう。』
『…おっちゃん、今でも
あの二人のつきあいには、反対?』
『そんなことないぞ。
コータローは覚えてないかな?京治の母親は…』
『やっぱ?俺も思ってた。
あかーしの母ちゃんと小春ちゃん、
ちっと似てるよな?!
優しいのに、案外、頑固なとこ。』
『(笑)やっぱりそう思うか。
私が自分の家族を幸せに出来なかった分、
京治が小春君を選ぶなら
絶対に幸せになってほしい。』
『…それ、あかーしに
直接、言ってやれないんですか?』
『それを渡せば、伝わるさ、
京治はカンのいいヤツだ。
…それと、君らには京治と小春君のことを頼む。
京治にとって家族は、
家の者ではなく、君達らしいから。』
『…金持ちも、大変だなぁ。』
『自分で選んだことだ、私は後悔はしてないよ。
だからこそ京治にも、
自分で選んで後悔なく生きてもらわんと。』
『ま、あの二人がうまくいけば、だろ?』
『アハハハハ…それは間違いあるまい。』
『自信、あるんですね?』
『あるな。あいつら二人ともマジメだから。
それぞれ違う男、違う女とつきあってみて
なおさらお互いでないとダメだと確信しただろう。
その限界が、三年ってとこだ。』
『…もしかして、狙い?』
『そのくらいのことに耐えられんようじゃ
女も家族も会社も守れん。
赤葦の家を継ぐには、それ相応の山を越えんと。』
『継ぐのは、長男じゃ…?』
『私は、諦めておらんのだよ。
京治はまだ若い。しばらくは外で苦労させて
20年後には京治に継がせる。
…それまで私に力があれば、だが。』
『おっちゃん、長生きして!
俺、"社長の友達"になりてー!』
『ならばコータローのためにも頑張らねばな(笑)』