第18章 誓いの言葉
『おーいっ、起っきろーっ!』
目覚まし時計より
はるかに威力のある声。
もちろん、木兎さん。
『なにっ?!』
『どした?!』
『…ぁんだよぉ…』
『行くぞ!』
『どこ?』
『空港。』
『何しに?』
『天丼、食いに。』
『…は?』
『この間、テレビで空港グルメやっててさ、
天丼が、超 うまそーで。
俺、その時から決めてたんだよね。
あかーしの見送りの時は
ぜってー、そこの天丼食う、って。』
『…見送り、いらないって言ってたじゃん。』
『だからぁっ、
見送りじゃなくて天丼、食いに行くんだって。』
『…どーする?』
『天丼!』
『おめーじゃねぇよ、小春ちゃん、どーする?』
『…お腹、すきましたね。』
『だろ?
小春ちゃんもあのテレビ、見てた?
ハンバーグも、んまそうだったよな~。』
…木兎さんが
本当に天丼が食べたかったのか、
それとも
私を空港に行かせたかったのかは
わからない。
でもなんとなく、
行った方が
後悔しないような気がした。
一人じゃ、無理だけど。
みんなが一緒なら。
『んじゃ、行くか!』
『まぁ、もともと
そのつもりの一日だったしね。』
『でも会ったらどうする?』
『お前の見送りじゃなくて
天丼食いに来た、って言えばいいじゃんっ!』
『いや、会わねーだろ。
あんだけ広いんだぞ。相当、探さねーと。』
『秋紀、わかってないなぁ。
ドラマだと、こういう時、会えちゃうんだって。』
『そりゃ、ドラマだからだろ?
現実を見ろ、現実を。』
そんなことを言いながら、空港へと向かう。
『現実を見ろ、現実を。』
…さっきの木葉さんの言葉が
耳から離れない。
京治さんといた日々は
ドラマみたいなことの繰り返しだった。
これから…
京治さんのいない毎日が、現実。
そう思うと、
気持ちも落ち着く。
出会う前に、戻るだけ。
生きてきてこれまで、
ほとんどの日々に
京治さんは、いなかった。
そうだ。
こっちが現実だ。
大丈夫、やっていける。