第18章 誓いの言葉
帰り道、
運転するエリさんが言った。
『…小春ちゃん、泣かなかったね、スゴイ。』
『あたし、エリさんみたいに
強くならなきゃ、と思って。
そうじゃなかったら、絶対
グズグズになってたはず。
エリさんのお陰です。』
…木葉さんが、ゲラゲラ笑う。
『小春ちゃん、すっげー残念なお知らせ。
エリだったら、間違いなく号泣して
オバケみたいに目を腫らしてたはず。』
『うん、異論なし。』
『…え?』
『俺ら、一回、すっげー大喧嘩して
勢いで"別れよう"ってなったことあってさ。
しばらく連絡とらない間に、
俺がたまたま親戚の出産祝いを買いに
イトコの女の子と出掛けたとこ見かけて
すっげーショック受けてんの。』
『さっさと誰か妊娠させたかと思って。』
『妄想しすぎ(笑)
そしたらその夜、電話かけてきて、
"別れたくない"って 大号泣よ。
あんまり泣くから、心配で家まで駆けつけて、
なんとなくそのまま仲直りして今に至る。』
『…エリさん、泣くの?』
『意外だろ?』
『意外すぎ…あたし、エリさんを目指して
泣かないイメージトレーニングまでしたのに!』
『損したねぇ(笑)今から、泣く?』
『違う意味で、泣きたい(笑)』
…木葉さんの家に帰り着いたのは
朝、7時過ぎだった。
木兎さん夫婦は、まだ、眠ってる。
『ふぁ…あたしたちも、もうちょっと眠る?』
『だな。』
『私、』
『ちょっと、小春ちゃん、
帰る、なんて言わないでよ?』
『…でも、』
『はい、おやすみー。』
エリさんが、私の頭を抱えて
マットレスに倒れ込む。
…あの、やわらかなおっぱい。
『木葉さん、エリさんと寝なくていいの?』
『たまにはのびのび寝させてくれ~。』
『ムムム!こっちこそ、
たまには寝相のいい人と、
静かに眠りたいもんねー、だ。
寝よ寝よ、小春ちゃん。』
…正直言って、ありがたかった。
今、一人になったら、
思考はどこまでも
堕っこちていくに違いない。
京治さん、
眠らせてあげられなかったな…
そんなことを思ったのも一瞬のこと。
やがて、エリさんの寝息と共に
私も眠りについた。
夢も、見なかった。