第18章 誓いの言葉
紺色の闇。
地上に近い空に
ほんの少し、オレンジがさす。
朝が近い静かな街を走る車。
運転してるのはエリさん。
助手席に、木葉さん。
後部座席に、京治さんと、私。
…さっき、部屋を出た時には
もうタクシーはいなくて、
みんなも起きていた。
(木兎さんだけは、
無理矢理起こされたみたいで、
まだ寝ぼけてた。)
『最後の最後まで迷惑かけて、すんません。』
と謝った京治さんに
『そう思うなら、さっさと帰国して
会社やめて、俺にトスあげてくれ。』と
木兎さんが言い、
『光太郎は寝てただけでしょ!』
と奥さんが頭をはたき、
みんなで笑って、
私たちは車に乗った。
木兎さん夫婦が見送ってくれる中、
ゆっくりと車が動き出す。
『木葉さん、エリさん、
ほんと、何から何までありがとうございます。』
『…もう、なんもしゃべんな。』
『私たちのこと、気にしないで。
1秒でもくっついててほしくて
送ってるんだからね。』
…そう言ってくれた二人に甘えて、
私たちは、ずっと手を繋ぎ、
お互いの肩にもたれあっていた。
『…6時にホテルに
着いてればいいんだよね?』
ゆっくり、そして、
少し遠回りもしてくれて、
それでも時間はすぎ、
ホテルが見えてくる。
動き始めた街の中、
その活気に逆らうように
ノロノロとホテルの前に到着する車。
本当に、
魔法が解ける時。
『着いたよ。』
『ありがとうございました。』
車を降りようとする京治さんを
木葉さんが、呼び止める。
『おい、あかーし!』
京治さんが、
ドアにかけていた手を止めて
助手席の木葉さんを見ると、
突然、木葉さんはエリさんを抱き締め、
あついキスをした。
一瞬、驚いたエリさんも
すぐに、それに応える。
…外国の映画みたいに、キレイ…
二人に見とれていると、
車を降りようとしていた
京治さんの背中が振り返り、
木葉さんと同じように
私を抱き締めて…
一生、忘れない。
朝焼けの風景。
木葉さんたちの突然のキス。
…そして、京治さんとの、最後のキス。
今にも溢れそうな涙を押し込んだ、
頭の奥の痛み。
『それじゃ。』と言った声。
黒い瞳に映った、私の顔。
大好きなほほえみ。
…そして、
消えていく後ろ姿。