第18章 誓いの言葉
『小春ちゃん、久しぶり~!
元気だった?困ってること、ない?』
翌日、仕事が終わった私が
木葉さんの家に着いたのは
八時頃だった。
エリさんは先に着いてて、
少し遅れて木兎さん夫婦も到着。
『あかーしは、会社の人たちとの
壮行会の後で来るから遅くなるって。
先に始めよーぜ。』
『主役不在だけど、乾杯っ!』
久しぶりの顔ぶれ…
京治さんが、いないけど。
京治さんが、いないだけ。
京治さんが、いない。
京治さんが、いない。
…京治さんがいない。
これからは、
これが普通になる。
だめだ。
考えただけで涙が出る。
目の前のお寿司を口に放り込んだ。
『ん!わさび、辛っ!から~いっ!』
やだ、小春ちゃん、涙目!
おい、水、水!
もう、光太郎、だからワサビ抜きも
頼もうって言ったのにぃ。
…ごめんね、木兎さん。
ほんとはそんなに辛くなかったんだ…
みんな、敢えて普通にしてくれてる。
それがわかるから、ますます、
京治さんがいないのが、際立つ。
座るときも、ひとつ、椅子があく。
木兎さんに突っ込む役がいない。
ワインが、減らない。
いつも、
私のどこかに触れてる
指のぬくもりが、ない。
ソファが、あいてる。
どこにも、
京治さんの気配が、ない。
いつも静かな人だけど、
それでも、いないと
こんなに寂しい。
木兎さんと奥さんが騒いで
木葉さんとエリさんが笑ってる。
私は、
誰を見たらいい?
どうしよう。
私、
やっぱり
京治さんがいなくなることが
想像できないよ。
待ってるって
言っちゃいけない?
困らせる?
待ってるって
言っちゃいけない?
今さら?
待ってるって
言っちゃいけない?
…いけない、よね。
わかってる。