第18章 誓いの言葉
電話を終えて気がつくと、
スーパーはもう、
閉店の音楽が鳴っていた。
何も買わずに店を出る。
…あさって。
京治さんが、出発する。
見送りに、行ってもいいのだろうか?
それとも、明日の夜が最後だろうか?
そもそも空港って…
ここからどうやって行ったらいいんだろ?
そんなことすら、まだ、しらない街。
向かいから、ベビーカーを押す
感じのいい女性が歩いてくる。
今すぐ行く訳じゃないのに、
思わず、声をかけた。
『あの…成田って、どう行ったらいいですか?』
『成田?…空港ですか?
だったら、電車よりバスがいいですよ。
横浜駅から、一時間半くらいかなぁ。
…ご旅行ですか?』
『え、あ、いや、見送りに…』
ベビーカーの中から、赤ちゃんの声がする。
優しい声で子供に話しかけてから、
その人は、私に言ってくれた。
『晴れるといいですね。
旅立ちは、気持ちよく見送ってあげたいから。』
…"気持ちよく見送ってあげたい"
ほんとに、そうだ。
ちゃんと、見送らなくちゃ。
泣き顔で終わらないように。
『ありがとうございました。』
女性にお礼をいって、別れた。
食欲はなかったけど、
ドラッグストアに寄って
コラーゲン入りの栄養ドリンクと
美肌成分配合ザクロゼリーを買った。
…他に、
することが思い当たらなかった。
明日。
カッコよく、さっそうと、
エリさんみたいに、
京治さんを元気付けて
送り出してあげられるように。
…帰って、鏡の前で、練習した。
やればやるほど、
涙が止まらなかった。
今のうちに涙が全部出るように、
とりあえず、とめどなく、泣いた。
涙は、なくならなかった。
でも、
疲れて、眠れた。
それだけは、よかった。