第18章 誓いの言葉
『もしその時は、帰国したら、俺、
赤葦建設、辞めさせてください。
それと、もう赤葦の家に出入り禁止に
してもらっても構いません。
財産分与も一切、放棄しますので、
小春と結婚させて下さい。』
『ほう、また随分と大きな話だな。
辞めて、どうする?』
『自分で、会社、作ります。
…今の会長みたいに、
自分でゼロから始めて、
俺の三代後くらいには、
赤葦建設のライバルになれるような
会社をつくります。』
『ほお!ぶちあげたなぁ。
しかし、苦労するぞ?
その苦労に小春君をつきあわせるつもりか?』
『会長や社長を見て育ってきましたから、
苦労は承知の上です。
そのためには小春が必要なんです。
自分のためじゃ、苦労は出来ない。
愛する人…家族がいてくれないと。
俺が赤葦を名乗るのが迷惑なら、
俺、小春の家に養子に入ります。
今後、一切、赤葦の名前、名乗りませんから。』
『小春君、君も納得してるのか?』
『はい。そのために、一旦離れるんです。
もし愛し合ったまま再会できたら…
喜んで、一緒に苦労させてもらいます。
赤葦建設を辞めたこと、
私が、京治さんに後悔させません。』
『この間、話した時より、
随分と強くなったな、小春君。』
『社長、ひとつだけお願いがあります。
牛島組との約束に、私を辞めさせるって
ことがあるんですよね?』
『あぁ、そうだったな。心配するな、
家と仕事は私が責任もって探す。』
『いえ、これ以上、会社に迷惑かけられません。
家も仕事も、自分で探します。ただ…』
『なんだね?』
持ってきた退職願いを差し出す。
『普通は辞める三ヶ月前に、上司に
出すものだと思うんですけど…
今、私、上司っていなくて。
あの、少しでも早く
会社を辞めさせて頂けませんか?
今の地下資料室勤務では、
あまりに社の役にたたないのに、
お給料頂くのが申し訳ないです。
自分の行き先を早く決めて…
2か月後、
京治さんが旅立つ時には
私の心配をせずに
出発してもらいたいと考えてます。』
…いっきに、喋った。
緊張したけど、言いたいことは言えた。
『…わかった。これは私から直接、
人事に出しておく。あと一週間…
今月いっぱいで、どうだ。』
『あ、ありがとうございます!』