第18章 誓いの言葉
次に目が覚めたのは
夜明けの時間。
そっと布団をぬけ
顔を洗って、
窓を開ける。
川が流れる音、
何かを配達するバイクの音、
通りを掃き、水をうつ音、
方言でかわされる、朝の挨拶…
温泉街に、朝の訪れた音がする。
昨日とは違う、
新しい1日の始まり。
『おはよ。』
振り向くと、
布団からこっちを見てる京治さん。
『おはよう。眠れた?』
『もちろん。小春と一緒だから。』
顔を洗った京治さんは
窓際まで来ると私を後ろから抱き締め、
一緒に外を眺めた。
『…もしかしたら、
小春と一緒に見られる
最後の朝の風景かもしれないな。』
ポツンとこぼれた言葉に、胸が震える。
だめ。泣かない。
まだ、何も始まってないから。
『ね、京治さん、』
『ん?』
『明日、社長のところ、行く?』
『あぁ、朝イチで。』
『…私も一緒に、連れていって。』
『いいけど…なんで?』
…私の気持ちを聞いた京治さんは、頷いてくれた。
『いつのまに、そんなこと考えた?』
昨日。
木兎さん達や
木葉さん達とずっと一緒に過ごして
思った。
あんなに仲がいいのに、
目線はちゃんと、それぞれ、
自分の行くべき道の先を見てる。
そして、誰かが前に行くから
みんなも自然と前に行く。
依存してないから、一緒にいられる。
自立してるから、人に優しく出来る。
無意味に立ち止まるのは
誰のためにもならない。
『だから私もちゃんと、自分で社長に伝える。
…私も、
会社に迷惑かけた一因なのは間違いないし。』
『いろいろ悩ませて、ごめん。』
『あ、"ごめん"は言わない約束!』
『…小春。
いっぱい苦労かけてるのに、
俺を好きでいてくれてありがとう。
…愛してる。
…どうかな?ごめんの気持ち、通じた?』
『うん、エリさんの言ったとおり!
"ごめん"を言い換えただけで、すごく幸せ。』
『エリさんと付き合い始めて、
木葉さん、すごくいい男になったよ。』
『…エリさん、セクシーだし、
おっばいもでっかいしね。』
『それは、俺は知らないな(笑)』
『…触ってみたい?』
『ばーか。あれは、木葉さんの。俺のは、こっち。』
…そのまま窓際で、
朝のご挨拶がわりに、ちょっとだけ、愛し合った…