第18章 誓いの言葉
夜中に一度、目が覚めた。
京治さんの腕の中だった。
静かな寝息をたてる京治さん。
いつもの、安心しきった寝顔。
これから先…もう2か月後には
一人で、
よその会社の人と
よその国の慣れない現場で働くことになる。
言葉も、人間関係も、食事も、
慣れるまでは苦労の連続だろう。
そう思うと、
私の醜い嫉妬心なんかより、
誰でもいいから京治さんを
眠らせてあげて、と思う。
半年か、
1年か、
2年か、
3年か。
いずれにしても
人が、変わってしまうには
充分な時間だ。
ドラマなら
『いつまでも、待ってる。』
と言うんだろう。
でも、
それがほんとうの優しさだとは
私は思わない。
京治さんが言ったとおり、
会えない時間に
何もしてあげられない自分より
そばで支えてくれる人がいるなら
その人に頼ってほしいと思うのだ。
だから、私も、
待たないことにする。
向こうで京治さんが
どんな女の人とつきあおうと、
抱こうと…もし結婚したとしても…
それほど大事な人ができたのなら
それはそれで、いい。
私も、
もし誰か気になる人が出来たり
告白されたりしたら、
つきあってみようと思う。
諦め、ではない。
一度、全て、手離す。
そして、確認するのだ。
誰が運命の人なのかを。
京治さんと同じくらい、
私も覚悟を決めないと、
好きになった者同士、
フェアじゃない。
…この旅行で
思う存分楽しめた。
想い出も出来た。
人生のなかで経験する
恋のひとつとしては
もう、思い残すことはない。
残り2か月、
精いっぱい、恋しよう。
…そう思ったら、
ますます京治さんが
いとおしく思えてくる。
京治さんの、おだやかな
寝息をきいているうちに、
私もまた、眠りに落ちていった…