第18章 誓いの言葉
…予想に反して、
京治さんは、部屋に入るとまず
スマホを取り出した。
『小春、二人で写メ撮ろ。』
浴衣姿で二人でくっついて、自撮り。
ギューッと肩を寄せて
頬がくっつくくらい。
『もう一回、』
カシャ。
その瞬間に、京治さんが私の頬に
キスをする。
『今度は、小春がキスして。いい?』
カシャ。
私も京治さんの頬に、キス。
あ、京治さん、ウィンクしてる!
いいなぁ、ぜんぶ、
私にもシェアして!
…まるで高校生のカップルみたいに
それからしばらく、自撮りしたり
お互いが今日、撮った、旅先写メを
見せあいっこした。
みんな、本当に仲良くて、
みんな、本当に楽しそう。
…離れることは寂しいけど、
こんな時間が持てたことは
感謝したいくらい。
そう思ったとき、
『…あ、ん…』
右隣の部屋から声がする。
この声。
続くように、
左隣の部屋からも
『…秋紀、まだ、ダメ…』
ニヤリと笑う京治さん。
『…やっと始まった。』
『なに?何を待ってたの?』
『どっちも、きっと今まで、
うちの部屋から声が聞こえないか、
聞き耳たててたはず。
でも、始まんないから、待ちきれなくて
もう、自分達で始めたんだよ。
…小春のあえぎ声、
いくら木兎さんや木葉さんでも
他の男に聞かれるの、嫌だからさ。』
そんなこと、考えてたの?!
さっきまで写メを撮ってた時の
高校生みたいな顔から一転、
急に"男"の顔になった京治さん。
『…隣はもうどっちも、
俺らのことなんか気にしてないから。
小春、たくさん、啼いて…』
カタ、とスマホを置いた京治さん。
『おいで…小春。』
さっきと同じ言葉なのに、
明らかに、湿度も熱も違う。
今度のは…
呼ぶ声じゃなくて
求める声。
この声が…
ずっと私だけのものならいいのに。
いつか、
そうじゃなくなる日が来たら、
きっと私は
今日のことを思い出して
泣くのだろう。
その時は
もう二度と泣けないくらい
涙が枯れるまで泣けるように、
今日の京治さんのすべてを、
心に、
まぶたに、
やきつける。
ひとかけらの後悔も
残さない覚悟で…
心を込めて、
抱かれる。