第18章 誓いの言葉
『俺、会社、辞められませんでした。』
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『俺が赤葦建設からの出向扱いで
牛島組の社員と一緒に
今度の事業の現地に行くことが、
次の条件なんですけど、』
『ん?よくわかんねー。』
『あたしも。秋紀、説明してー。』
『…給料は赤葦建設が出して、
あかーしは牛島組で働くんだよ。
それも、現地…どこになるかしんねーけど
アジアとか中東とかの途上国の現場で。』
『…外国、行くってこと?』
『…だろ?あかーし。』
『はい。』
『期間は?』
『短くて半年。長くて三年。
それは、行ってみないと…』
『…厳しいな…』
『もうひとつの条件ってのは、』
もう、誰も言葉をはさまない。
…はさめない。
それくらい、
京治さんの表情は苦しそうだった。
『出国から帰国まで、
日本との連絡や途中帰国は、一切、禁止。』
『…なんで?』
京治さんにかわって、
木葉さんが口を開く。
『多分、牛島組の社長は、
あかーしと娘との結婚を諦めてねーんだよ。
もしかしたら、
娘をたまには現地に行かせたりするかもな。
お近づきにさせたくてさ。
その分、お前ら二人をひき離しておいて
連絡とらせなきゃ、別れるって思ってんだろ。
牛島組の人間とも現場で苦楽を共にさせておけば
あかーしの気持ちも動く、って
思ってんじゃねーの?』
『…その通りだと思います。』
『はーっ?!あかーし、父ちゃんに
なんとかしてもらえなかったのかよっ。』
『今回の件に関しては、
全部こちらの勝手が原因なので…
共同事業を継続させてもらえるだけで
御の字ですから。
社長としては、もう、頭下げるだけです。』
『…きったねーな!』
『…ビジネスの現場なので、
個人の都合は関係ない、と…』
『そんなことねーじゃん!
向こうの社長は、完全に
自分の都合であかーしを
いいように使うわけじゃんよっ!』
『でも、対会社として考えたら、
赤葦建設は、ほとんど痛手は負わないから
むしろ、牛島組に感謝、って立場で。
…結局、
俺が自分で泥かぶれば済む問題と思ったら、
ごめん、小春、俺、断れなかった…』
たくさんの社員と
その家族を背負う決断。
…京治さんが、そう簡単に断れるはずがない。
お父さん…社長がそうやって
会社を守り、大きくしてきた姿を
ずっと見て育ってきたんだから。