第18章 誓いの言葉
翌日の昼。
牛島組から帰る途中の二人、
ホテルのレストランの個室にて。
『………』
『………』
『京治、』
『…俺に、断るという選択肢は、』
『なくはない、と言いたいところだが、』
『…ない、んですよね?』
『…ない、な。』
『わかってます。
息子といえども、いちサラリーマンですから。
これ以上、
会社に迷惑かけられないってことぐらい、
…わかってます。』
『やりたい仕事だろ?』
『そうですけど。
もう、自分の中では終わってましたから。
仕事のことは全部、過去形にしてました。』
『まぁ、思った通りにはいかんのが
ビジネスというものだからな。』
『…思った通りにいかない"世の中"ってもんを
せいぜい学ばせてもらいますよ。』
『…小春君には?』
『今夜、俺から言います。』
『…私がいうことじゃないが、
君達が言う"愛"とやらを試す
いいチャンスなんじゃないか?』
『他人事だと思って…楽しそうですね。』
『…』
『もしかして、これをきっかけに
俺たちが別れればいいと思ってます?』
『いや、そんなことは…』
『…もし別れたら、
ほら見たことか、って笑ってください。
その時は、俺、誰とでも結婚するし
兄さんの次の社長の座も狙いますよ。
社長を見習って、
家庭より会社と仕事のために
生きることにしますから。』
『まぁ、そう荒れるな。』
『俺は、いいんです、
そういう家に生まれたんだから。
でも…小春に申し訳ない。
俺と出会わなければ、
もっと楽しい恋愛が出来たはずなのに…』
『…彼女の仕事と住まいは私が責任もって探そう。』
『お願いします…先に帰っていいですか?疲れた。』
『とりあえず飯を食え。
ほとんど手をつけてないじゃないか。』
『食欲、あると思います?』
『…そうか。気を付けて帰れ。』
『失礼します。』
…昨日、運命の人だ、なんて
言わなければよかった。
あんなに幸せで楽しそうだったのに。
その分、がっかりさせてしまう。
ごめん。
ごめん。
小春、
ごめん。
本当に
本当に、
ごめん。
俺が小春のこと
見つけてしまったばっかりに…
ごめん。
ごめん。
好きになって、ごめん。
そばにいてやれなくて、ごめん。
出会ってしまって、
ごめん…。