第5章 ヴァージンロード~月の道~
伊勢えび、二匹。
…持って帰るわけにもいかず、
結局、その場で私がさばき、
その夜は二人で伊勢えび三昧。
『あぁ、思わぬご馳走にありつけた!
蛍、ごちそうさま~。』
『別に、俺、何もしてないし。
…てかアキ、ちゃんと料理出来るんだ。』
『栄養士にむかって、失礼だなぁ!
ま、上手ってわけじゃないけどね。
自分が食べたい味って、
よそで探すより、自分で作った方が早いから。』
『ふーん。兄ちゃんと別れなければよかったのに。』
『はい?なんでそうなる?』
『兄ちゃんと結婚してたら、たまには俺も、
こんな飯、食べられたってことでしょ。』
あれ。
遠回しな表現だけど、
それって、もしかして…
『ね、おいしかった、ってこと?』
『は?そんなこと、一言も言ってないし。』
…ははーん、これが明光君が言ってた、
毒舌ってやつかな?
それもなんだか可愛く思えるのは、
年上の余裕ってやつかしら(笑)
『じゃあさ、
今度、ご飯作りすぎちゃったりしたら、
一緒に食べてもらっていい?』
『…いいけど。
でも急に呼び出されても困るから。
俺にもいろいろ、都合があるし。』
『えーっ?
自分は急に呼び出して、
さらにこうやってご飯まで作らせたのに?』
『…うるさい。』
うん、蛍、やっぱり、かわいい!