第5章 ヴァージンロード~月の道~
ある日、珍しく、蛍から電話があった。
『ちょっと。うちに来てくんない?』
『今?急にどうしたの?』
『いいから、出来るだけ早く来てよ。』
…呼び出されることなんて滅多にないから
何事かと心配で駆け付けてみると、
蛍が、中型の段ボール箱をにらみつけている。
『遅いよ。出来るだけ早くって言ったのに。』
『急に呼び出した方がそれ言う?
これでも急いで来たんだけどね…で、なぁに?』
『コレ。なんとかしてくんない?』
蛍の目線の先の段ボール箱からは、
ガサゴソガサゴソという音がする。
…蛍に言われるままに箱を開けてみると、
おがくずまみれの生きた伊勢えびが二匹…
『…ねぇ、何で伊勢えび?!』
『知らない。
なんか、つきあいで書いたアンケートが
当たっちゃったらしいケド。』
『どーすんの?』
『だから呼んだんじゃん。持って帰ってよ。』
『こんな大きさの段ボールを電車で?
中からゴソゴソ音がするのに?
怪しすぎるもん、無理無理。持って帰れない。』
『どーでもいーから、どーにかして。』
『…あれ、蛍、もしかして、こういうの苦手?
恐竜と一緒みたいなもんじゃない?』
『は?恐竜と一緒にすんな!』