第18章 誓いの言葉
だけど。
『君には少々、辛いことがあるかもしれん。』
と言った社長の言葉が
単なる脅しではなかったことは
翌日、早速、実証された。
…私は、季節外れの人事異動になった。
受付から、地下の資料室管理へ。
そもそもそんな部署は、社内にない。
私のために…私を追いやるために
作られた部署。
笑える。
なんか、こんなテレビドラマ、あったよね?
ミニスカのOLが出てたのは…ショムミ?
警察が舞台だったのは…んまい棒?
なんか、
そんな響きのタイトルのドラマ。
ここまで露骨だと、笑うしかない。
『小春ちゃん…何したのよ?』
心配してくれる受付の仲間たちに
『私の片付けの能力が
認められたんですかね?!』
…と笑って言えたのは、
ある程度のことを覚悟してたからだろう。
今までいた受付は、
玄関を入ってすぐ。
明るい光も
新鮮な空気も
人の流れも、
社内で一番ある場所だった。
ここは、そのどれも、ない。
ついでに、仕事も、ない(笑)。
例えば、
じゃあもう開き直って
スマホでゲームでもしちゃうか、と思っても
電波の入りもよくなくて。
あの社長…京治さんのお父さん…
こういうことするタイプじゃないと思ったけど…
父親としては、きっと、
こんな人じゃないはず。
でも、
大会社の経営者ともなると、
このくらいのこと、
平気で出来るくらいの人でないと
務まらないんだろう。
…そうやって思えるのは、
昨日、社長室で最後にみせた姿に、
ほんの少しの親心があったと確信してるから。
『もし二人が本当に想いあってるなら、
乗り越える姿を見せてほしいと思ってるよ。』
…あの言葉。
京治さんを、後継者としてではなく
息子として愛してるからの言葉だと
思うからだ。
書類の埃を払い、
どうでもいい順番に並べながら
そんなことを思っていると、
"ピンポーン"
地の果てのような静かなこのフロアに
エレベーターが止まる音がした。
ここに用がある人は
ほとんど、いない。
…期待と、不安が
1度に襲ってくる。
京治さんかも、という期待。
会社の人かも、という不安。
京治さんなら、いいのに。
でももし会社の人なら…
こんなところまで来て
ロクな話じゃないことは間違いない。
近づく足音は…
京治さんより
少し、重たい気がする…。