第18章 誓いの言葉
結局、なにも返事できないままだった。
深々と頭を下げて、社長室を出る。
来るときは、緊張して
全く見えなかった廊下の風景。
今は、不気味なほど、広くて静かで…
いつも私がいる一階から、
エレベーターで
ほんの何十秒かのフロアーには
こんな世界があったのだ。
京治さんは、
その世界で生まれ育った人で…
その世界で生きていく才能がある人。
『何があっても俺を諦めないで。』
と言ってくれた、京治さんの言葉と、
『君から身を引いてくれるとありがたい。』
と言った社長の言葉が
繰り返し、私の頭のなかで響く。
…ねぇ、京治さん。
私達、つきあってても、いいの?
私達、出会わない方がよかったの?
…誰に何を言われても
京治さんの言葉だけを信じるって、
約束したのに。
もう、心がこんなに揺れてる。
私の存在は、
会社の未来にも
京治さんの未来にも
社員やその家族の未来にも
邪魔にしかならないのかな?
でも、
好きで好きで、大好きで…
"好き"という気持ちが
"申し訳ない"に繋がるって、
…苦しい、ね…