第18章 誓いの言葉
京治さんと会うのは、
いつも木葉さんの隠れ家。
『なんのことだか、さっぱり…』
これは、ホント。
だから、演技じゃなくて心からそう答えた。
『確かに見たというのがいるんだよ。
京治が君を連れて、堂々とエレベーターで
部屋に上がって行った、とね。』
あ…
『それって…この間のパーティーの…』
『そうだ。
70周年パーティーの時、うちの次男が見たと。』
…あぁ。それなら、確かに。
『間違いないんだね。』
思わず納得した顔を、見られた…
『でも、あれは、
ナンパからかくまって下さっただけで…』
一瞬の間の後、社長は、笑った。
…声を出さずに。
苦笑い、という感じ。
『なんだよ、あいつ、
京治にナンパを邪魔された腹いせに
俺にネタを売ったのか(笑)
顔はいいのに、つくづく残念なヤツだな。
次男は誰に似たのか女癖が悪くて…
そうか、それは却って、迷惑をかけたね。』
…どうしてこんなにのんびり話してるんだろう。
会社の一大事に関わることじゃないの?
『小春さん。私は今、社長じゃなくて
京治の父として、君と話してる。
…京治は、昔から頭がよくて
空気を読む力に長けてる子でね。
多少、複雑な家族関係だったからか、
迷惑をかけることがないかわり、
自分の本音も言わん。
だから、うちの家族は一度も
京治に彼女を紹介されたことがないんだ。
京治がどんな女性が好みか、
私はまったくしらなかったよ。
もし小春さんが彼女だとしたら、
うん、京治はさすがだな、と思う。』
…これは、罠、なのだろうか。
うっかり"ありがとうございます"
なんて言ったら、バレてしまう。
黙って、やりすごすしかない。
今のところ、完全に劣勢な、私。
親戚のおじさんと話してるかのような
ごく普通の口調で、話は続く。
『京治は末っ子だが、兄達はみんな腹違いだ。
もう少し甘えさせてやれればよかったんだが
アレの母親も、他の兄弟に気を使って
京治を特別扱いしないようにしてたしなぁ。
その母親も多感な時期に亡くなって
その後、後妻が来たりしたもんだから…
あんまり笑わない、というか、
愛想がいい子じゃないだろ?』
『そんなことないです。
木兎さん達といる時なんか、
みんな高校生みたいにとっても楽しそうで…』
…ハッ。
つい、喋りすぎた!?