第18章 誓いの言葉
『ほう…』
大きな窓で逆光になっていて、
表情はわからない。
ただ、じっと見られていることは
間違いなく…
蛇ににらまれた蛙…
いや、そこまで弱くちゃいけない。
いきなり、
敵の大将と向き合ってしまった小兵?
私だって、戦う気持ちは、ある。
討ち死にするわけにはいかないけど…
ツーッ…
ブラウスの下に流れる、変な汗。
身震いするような緊張感。
とにかく、何か、一矢報いなくては、
という気持ちを奮い立たせる。
敵の第一声は…
『そんなに緊張しないで。』
…あれ?
もう少し棘のある言葉や罵声を
浴びせられるかと思っていたのに。
調子が狂って、
どう答えていいかわからない。
『まぁ、座りなさい。』
…すすめられるまま、
もう2度と立ち上がれなくなりそうな
ふわっふわのソファに腰を下ろす。
社長…京治さんのお父さんは、
予想していたより、穏やかな表情だった。
『小春さん、だね?
私は、君の会社の社長で、京治の父だ。
…変な自己紹介だな。』
フフ、と笑う感じが、京治さんに似てて、
少し和んでしまう…
いけない。
気が緩んじゃう。
『あの…私に、ご用ですか?』
『あぁ。
単刀直入に聞くが、君は京治の彼女かね?』
『え?』
『京治が、
惚れた女と結婚したいと言うから
そんな相手がいるのかと、
あれこれ探ってみたんだが…
部屋に女を入れた形跡も、
電話をかけてる形跡も、
女連れで出歩いてるという話もなくてね。
唯一、ホテルの部屋に女を連れ込んだ、
と聞いてあたってみたら、君だった。』
『ホテルの、部屋?』
いろんな意味で、心底、びっくりする。
家も電話も、調べられてる、ということ。
女性関係の噂話も。
そして…ホテルの、部屋?
『なんのことだか、さっぱり…』
これは、ホント。だから、演技じゃなくて
心から、そう答えた。