第18章 誓いの言葉
ノックする。
ガチャリと開くドア。
『小春、いてくれたんだ。』
『だって…起きてる姿、
10秒くらいしか見てないし…』
『俺…すぐ寝た?
ベッドに入った記憶がないんだけど。』
『倒れるように、ぐっすり。』
『…なんでだろうな。
小春がいると眠れるんだ。』
『寝顔ばっかり見てる私としては
ちょっと複雑な気持ちですけど(笑)…あ、これ。』
ワインとナッツを渡す。
『木兎さんに会った?』
『…明るい人でビックリしました。
今、リビングで寝てます。』
『あの人、いつでもどこでも
すぐ眠れるから、羨ましい。』
そう言いながら
ワインをグラスに注ぐ仕草が、
すごく色っぽい。
リーデルの繊細なグラスを
大きな手で、無造作にあおる。
まるで、水を飲む、夏の子供。
『小春も、飲む?』
返事を待たずに
グラスに注いだワイン、
を、
口に含む、自分の。
そして、
口に移す、私の。
それは、口移しという名の、キス。
…びっくりして、
唇の端からワインが溢れてしまう。
その滴を長い親指で拭い、
そして、細い人指し指で
ナッツの瓶を差して言う。
『食べさせて。』
…白い塩がついたアーモンドを一粒、
指ではさんで
京治さんの口元に持っていくと、
そのまま、指ごとくわえられる。
指先を舐められる感覚が、たまらない。
今日の京治さんは、いつもと違う…
ワインを一気に飲み干す姿を見て、
木葉さんからの伝言を思い出した。
『あの、木葉さんが、ほどほどに、って。
明日、仕事だろ、って。』
…カタン。
グラスをテーブルに置くと、
京治さんは、
口を手の甲で拭いながら
真っ直ぐに私を見て、言った。
『それ、ワイン飲み過ぎるなって話じゃなくて…』
ドサッ。
ベッドに押し倒される。
『小春との、セックスのことだよ。』
え?
『…でも木葉さん、
ここ、ラブホがわりにするなって…』
『さっき、電話で許可とった。ほら、』
ベッドサイドの引き出しを開ける。
『ここにコレがあることも教えてくれたし。』
箱に入った、コンドーム。
…黒い瞳が、私を見下ろす。
『小春、抱かせて。』
ダメ、なんて、言わない。
だって私も、
こうなることを望んでたから。