第18章 誓いの言葉
話しはじめて、二時間ほどたっただろうか。
木兎さんは、飲み過ぎたようで、
テーブルにつっぷしてガーガー寝てる。
『うるせーなぁ(苦笑)
コイツ、寝てても起きてても賑やか。』
『静かな京治さんが、どうやって
会話するのか、想像がつかないです。』
『見事だよ。あかーしほど、木兎を
うまくコントロールできるヤツ、見たことねぇ。
あいつは静かだけどさ、
ちゃんと、ものすごく考えてるから…
小春ちゃん、あかーしのこと信じてやって。』
『…信じるも何も、
ほとんど寝顔しか見たことないですけど…』
『不思議だよね。それでお互い、
好きになっちゃうんだからさ。』
『はい、不思議です。だけど、すごく、好き。』
『あかーしも、同じ気持ちだよ、きっと。
あーあ、羨ましいなぁ、
寝顔で彼女作れるって、
どんだけ省エネタイプだよ、あいつ(笑)』
そんな話をしていたら、
"チリリン"
小さなベルの音がした。
…あの、
ベッドサイドにあるかわいい電話と
同じものが、鳴っている。
こんなかわいい音がするのね…
木葉さんが言葉を交わす
受話器の向こうは、
間違いなく京治さん。
『…あー、わぁった。
小春ちゃんここにいるから、持たせるわ。
…んー、特別だぞ。自分で片付けろよ?!
…ある。ベッドサイドの引き出しの中。
りょ。こっちは大丈夫。あぁ。』
受話器を置いた木葉さんは、私に言った。
『小春ちゃん、あかーしが起きた。
そこのワイン、持っていってやって。
…あと、これも。
なんかちょっと食わせねーと
ぶっ倒れそうで、心配だわ、あいつ。』
木葉さんが、
戸棚からナッツの入った瓶を取り出す。
…ほんとの家族みたい。
高いびきで寝てる、子供みたいな木兎さんと、
優しくて気が利く、お母さんみたいな木葉さん。
京治さんがここに来たくなる気持ちがよくわかる。
歩き出した私の後ろ姿に、
木葉さんが声をかける。
『あかーしに"ほどほどにな"って伝えて。』
『ほどほどに、ですね?』
『そう。明日、仕事だろ、って。』
『はい、わかりました。』
ワインとナッツと伝言を持って、
…京治さんの元へ。