第18章 誓いの言葉
想いが通じたのだろうか。
『小春、』
カーテンの向こうの闇が
ほんのり薄くなり、
少し朱が混じり始めた頃、
京治さんが言った。
『会社の人間には内緒で、
また、ここで会ってほしい。
…小春のそばだと、落ち着く。』
それって…
『俺と親しくするとなると
いろいろ面倒だってのは想像できるよね?』
後継者とか、派閥とか、許嫁とか、
そういうこと、だろう。
『俺の都合を押し付けて申し訳ないけど、
つきあう、とか、そんなふうに
大袈裟に考えなくていいから…
小春が俺のことを
面倒くさいと思うまで、
誰にも内緒で、また会ってほしい。
イヤになったら、終わらせていいよ。
大丈夫、クビにしたりしないから。
何もなかったことになるだけ。』
言葉のあちこちに、
孤独と諦めと申し訳なさと、
だけど愛情に飢えていることが
ちりばめられていて…
私に出来ることなら、
何でもしてあげたいと思う。
あなたのことを
面倒くさいと思う日なんて
きっと、来ない。
だって、私はもう、
あなたに夢中だから。
…そう言えたらいいのに、
『はい。』
と、仕事を引き受けたような
返事しかできなかった。
それでも、京治さんは
ホッとしたような顔をしてくれる。
『小春、』
京治さんは立ち上がると、
ベッドの真っ白なシーツをめくって言った。
『朝が来るまで、少し、眠って。
今度は俺が、そばにいる。』
まるで魔法にかかったように、
私はベッドに吸い込まれる。
『おやすみ。』
優しい声と、おでこへのキス。
…あたし、バカかもしれないけど、
京治さんが、王子様に見える…
自分がこれほど
夢見る女子だったとは知らなかった。
…こんな恋をしてしまったら、
もう、二度と他の恋は、出来ないだろう。
大変な人を
好きになってしまったのかな…
眠りに落ちていきながら思ったその気持ちは、
あながち、
ハズレではなかった。