第18章 誓いの言葉
えんじ色の分厚い生地に
シルバーの刺繍がたっぷり施された
重厚なカーテンの向こうは
まだ、闇。
それから私達は、
しばらくの間、話をした。
京治さんは、赤葦家の三男。
三兄弟、皆、母が違うこと。
独り暮らしをしていること。
木葉さんは高校の頃の先輩。
仕事は嫌いではないけれど、
会社を継ぐつもりはなくて。
本当はワインが好きらしく。
『…あ、私に遠慮なく飲んでください。』
『やめとく。理性がなくなったら悪い。』
案外、律儀な人なんだ。
『…あの、どうして、膝枕?』
『疲れすぎると、眠れないんだ。
思い付きでこの間、小春に
膝枕してもらったら、
ぐっすり眠れて自分でも驚いた。
それに…
小春は、俺にも兄さんにも
軽々しくついてくる女じゃないところが
信用できそうな気がして。』
迷うことなく選ばれる言葉の一つ一つ。
頭のいい人なんだと思う。
そして、
大きな家に生まれたからこそ
当たり前のように身に付いた孤独を
淡々と受け入れて、
そこに身を投じるか、
それともそれを捨てるか、
まだ決めきれずに迷う心。
そんな中で心を許せる数少ない人が、
バレー部時代の仲間であるということ。
…少し、
この人のことが
わかってきたけど、
知るほどに、
この人のことを、
もっと知りたいと思う。
理由は、ない。
ただ、心がそう思う。
すべてを共有したい、と。
私から
それを言うことは
許されないのだろうか。
もし
そうなら、
お願いだから、
どんなことでもいい。
私の何かを欲しいと求めて。
膝枕でも
身体でも
心…でも。
そばに、
いたい。