第18章 誓いの言葉
私も少しうとうとしてしまったようで…
ふと目が覚めたのは、
膝の上の京治さんが動いた時だった。
起きた…かな?
顔を覗きこむ。
まぶたは開いてるけど、
頭はまだ覚めてないような、
まどろむような目。
…思わず髪を撫でると、
真っ黒な瞳が、私をうつした。
『気持ちいい…もっと、して。』
甘い、声。
ぼんやりとしたまなざし。
そして、柔らかい、髪。
理由なんて、ない。
ただ、この人が求めることは
何でもしてあげたい、と思ってしまう。
男にハマる、
ダメな女の典型的なパターンだろうか?
髪をなでている間、
また目をつぶっていた京治さん。
しばらくすると、
私の手をそっと掴んできた。
『…ありがとう。』
起き上がった彼は、
『重かったよね。』
と、さっきまで自分の頭がのっていた
私の腿を柔らかく撫でると立ち上がり、
自分で髪をクシャクシャと触りながら
『水?ビール?ワイン?』と聞いた。
『京治さんと、同じものを。』
と答えると…ミネラルウォーターを
ボトルごと渡してくれる。
ゴクゴクと飲み干す喉仏の動きが
男らしくて見とれる。
『…なに?』
『水、飲むんだな、と思って。』
フフ、と声をたてて笑った…
笑い声、初めて聞いたな…
『水、飲んだだけで驚くって、ひどいな。
さっきのイタリアマフィアの話といい、
俺のこと、何だと思ってんの?』
『…不思議な人…』
京治さんは、向かいの
一人がけのソファに腰をおろした。
右手で頬杖をついて、
首を傾け、
すっきりとした瞳をまっすぐ私に向け、
低くてよく響く声で、言う。
『ね、小春、俺に聞きたいこと、ある?』
…自分の小春という名前が
こんなにいい響きだと、初めて知った。
誰か、この鼓動を止めて。
でないと、
認めてしまう。
私、この人のことが、好き。