第18章 誓いの言葉
『失礼します。』
クラシカル、という言葉が似合う室内。
飴色の重厚なインテリアに、
真っ白なシーツのベッド。
そんな部屋にいる京治さんは…
『…何、不思議そうな顔してる?』
『…ジャージ、なんですね。』
この部屋に似合わない、というか
背景から浮かび上がるように真っ白なジャージ。
胸のところに翼を広げた鳥のマーク。
ところどころの紺色のラインが
デザインを引き締めている。
『なんで?』
『イメージでは、紫色のガウンに
ブランデー、みたいな…』
フッ。
あ…笑顔。
『それ、イタリアのマフィアか何か?
俺のこと、そんな風に思ってるんだ。』
『いえ、あの、お金持ちの風呂上がりって
そんな感じなのかな…って。勝手に…』
『膝の上にはネコ?』
『いたら完璧、です。』
少しだけ口の端をあげて
また一瞬、笑った。
…この人、結構、笑うんだな、静かに。
笑顔は、一瞬だけ。
でも、怖くはない。
『先に聞いとくけど…彼氏とか、いる?』
『いえ、残念ながら。』
『…よかった。
いくら職場の人間の依頼とはいえ
もし自分の彼女がこんなことしてたら
俺だったらイヤだから…』
こんなこと。
京治さんから頼まれたこと。
"膝、かして。"
ぐっすり眠りたいから、
膝を貸してほしい、と。
『…時間は?』
『大丈夫です。
明日も特に、予定ないですし。』
『本当に、彼氏いないんだ。』
『…そんな嘘、つきません。』
『…ごめん。』
ゆったりとした空間のなか、
京治さんはとても美しく気だるそうで…
『…俺に聞きたいこと、いろいろあるだろうね。』
『はい。でも…明日でいいです。
…眠ってください。』
ベッドだったらどうしよう?と、
ちょっと身構えたけれど、
ジャージの上を脱ぎ、
真っ白なTシャツ姿になった京治さんは
ポンポン、とソファを叩いた。
『ここ。』
言われた通り端っこに座った私を膝枕にして
ソファに横になる、京治さん。
頭の位置を落ち着かせるように
何度か身動きしたかと思うと、
グン、と、膝に重さが加わり、
脱力したのがわかる。
…もう、眠ったんだ…
疲れてるんだね。
ゆっくり、眠って。
どれだけ見ても見飽きない寝顔を見ながら
髪をなでる。
癒されてるのは、
私の方かもしれない。