第18章 誓いの言葉
京治さんからの頼みを
断れなかった私。
…その週の金曜日の夜、
呼び出された場所にやって来た。
都内の路地裏。
蔦の絡まった、レンガ造りの古い洋館…
なんだろ?
まさかホテル、じゃないよね?
"ヂリリリリン"
古びた呼び鈴は、
見た目通りの古びた音をたて、
出てきたのは…あの"木葉さん"だった。
『…迷わず、来れた?』
『はい。いただいた地図が
すごく、わかりやすかったので。』
あの日。
会社で木葉さんのスマホを使って
京治さんと連絡を取り合った時、
木葉さんが、地図をくれた。
『金曜の夜、あかーし、ここにいるから。』
『…』
『信用していいのかな、って顔してんね。
俺のことも、あかーしのことも。』
ハッキリ言っていいのかどうか…
でも、そう思ってる。
この人達のこと、信用していいの?
『そう思うところが、
あかーしが君を呼んだ理由だと思うよ。
言葉悪いけど、尻軽じゃないところ。』
そう言われたって、よくわからない。
だけど、一人でここまで来たのは、
私もどこか、
この人達は信用しても大丈夫だと
思っているから。
『ま、いろいろ気になるだろうけど
それはそのうち、あかーしに聞いて。
あいつ、待ってるから。』
そう言って、木葉さんは、
古い建物の中を歩いていく。
天井近くの木製の窓枠から、
埃を浮かび上がらせた月明かりが薄く差し、
廊下を照らすほの暗いランプが
緩やかに揺らめく光と影を作り出す。
デザインを施された手すりの
螺旋階段をのぼっていくと、
木葉さんは、重そうなドアの前で
立ち止まった。
ノックもせずに、呼び掛ける。
『あかーしっ。』
ガチャ。
ギギィッ…
外国の昔話、みたいな音がして
ドアが細く開き、
隙間から、京治さんの声。
『すんません、ありがとうございます。』
…敬語?
『おぅ。いっとくけど、ぜってー、
ラブホがわりにすんなよ!
俺がそーじすんだからな。』
『わかってますって。
ボクトさんじゃあるまいし。』
『アレは、言っても聞かねーけど(笑)
ま、ゆっくりしてけよ。
鍵、いつもんとこな。じゃ、おやすみ。』
…会話の内容は意味不明だけど、
二人がとっても信頼しあってることは
伝わってきた。
木葉さんの背中が
廊下の角に消えるのを見守ってると…
京治さんが言う。
『…入って。』