第17章 ジューンブライド ~クリスタルウェディング~
…4月。
私の誕生月。
武田さんが指輪をくれた。
誕生石のダイヤモンドがついている。
『婚約指輪を兼ねて…』
そう言いながら、左手の薬指へ。
…結婚への不安が
完全に消えた訳じゃないけど、
こうやって愛情を表現されるのは
やっぱり、嬉しい。
『僕、初めて知ったんですけど、
4月はもう1つ、誕生石があるんですね。』
4月のもう1つの誕生石は"クリスタル"、
つまり水晶。
『今回は、婚約指輪の意味もあったから
ダイヤモンドでしたけど…
いつか、水晶もプレゼントしますね。』
いつか、という約束が、嬉しい。
未来がある、と思える。
『それから…』
武田さんが、くすぐったそうに言う。
『お互い、同じ名字になりますから、
これをきっかけに、名字じゃなくて
名前で呼び合うようにしませんか?
…セックス以外の時も。』
苦い思い出がたくさんある今の名字から、
大好きな人と同じ名字へ。
あぁ、結婚するんだな。
この年の誕生日は、
そんな特別な1日になった。
…5月。
私は、自分の両親とはつきあいがない。
ウェディングドレスを着ても
見せる人がいないから、
結婚式はしなくていい、と、
一鉄さんに言ってある。
なのに、急に、一鉄さんが言い出した。
『来月、うちの両親とか親戚とか、
アキさんの親しい友人とか、
少しだけ呼んで、食事会、しましょ。
一応、ドレスとタキシード、着て。』
やーだーっ。
6月は、やだ!
『ジューンブライドですよ?
アキさん、梅雨、好きだし。』
『…私が一番嫌いな夫婦が、
6月に結婚してるんですっ。
ゼンゼン幸せじゃない人たち。
だから、私にとってジューンブライドは
鬼門みたいなもんなんですっ!!』
『…ほう。その言い方からして、
アキさんのご両親のことですね?』
『…当たりです…』
『なるほど。
…じゃ、ますます6月にしましょう。』
『なんでっっ?縁起が悪いんですってば!』
…でた。ニヤリ😁
『苦手は克服するためにありますから。
悪いイメージは、自分が幸せになって、
クリアすればいい。
大好きな梅雨の季節を、
もっと好きになれますよ、きっと。』
『いじわるぅ…』
『アキさん、意地悪されるの、
好きですもんね😁』
うっ…
…この人には、敵わない…