第17章 ジューンブライド ~クリスタルウェディング~
…激しい夢を見た気がする。
ベッドで、一人、目が覚めたとき、
最初に思ったのはそれだった。
でも、
起き上がろうと思った身体のあちこちが
ギシギシと痛む。
そして、甘い香り…
まさか。
夢ではなくて?
…現実なら嬉しいけれど、
それならそれで、
どんな顔で会ったらいいのか、
わからないような…(//∇//)
そっと寝室のドアを開けると…
『おはようございます(^-^)』
爽やかな…SはSでも
"Sugar Sweet Smile"な笑顔の彼が
キッチンに立っている。
ゆうべのことは…やっぱり夢、だった?
『…体、大丈夫ですか?
ちょっと、無理させちゃいましたよね。
すみません。』
…てことは、
やっぱり、夢ではなく、全部、現実?
『いえ…あの、はい、その、えぇと…』
…恥ずかしさで、言葉が選べない。
そんな私を気にする様子もなく
武田さんは、言った。
『お腹、空きません?
ちょうど、ホットケーキ、焼けますよ。
ハチミツの瓶もあいたことだし、
アツアツを食べましょう。』
…あの甘い香りは、
武田さんが焼いてくれたホットケーキ。
小さなテーブルに向かい合う。
…やっぱり、恥ずかしい…
…でも、ホットケーキはふわふわでおいしくて…
『んー、我ながら、いい焼き具合だ!』
リスのように頬を膨らませ、
ホットケーキを頬張る姿は、
夕べ、激しいセックスを交わした
同じ人には見えない。
『武田さん、』
『はい?』
『あの…夕べは私、いろいろと…その…』
思えば、
とてつもなく恥ずかしい姿ばかり
見せてた気がする。
『最高の夜、だったですね!』
あっけらかんと笑うのは、
私が恥ずかしくないように
気を使ってくれてるのだろうか?
『いえ、初めての夜なのに…
あんな姿、見せてしまいまして…』
ほんと、ごめんなさい、と、
声と一緒に、体も、小さく小さく
縮んでいくような気がする…