第17章 ジューンブライド ~クリスタルウェディング~
…こんな時に最初に思ったのが
"お風呂掃除、しといてよかった"
ということの私って、
余裕があるのか?ないのか?
『あの、先に、シャワー、どうぞ。
…ええと、着替え、どうしましょ…』
『実は、一組だけ持ってきたんです。
下心、ありありでスミマセン(笑)』
そう言ってくれた武田さんのお陰で
ちょっと雰囲気が柔らかくなる。
浴室のドアが閉まった音をきいて、
さぁ、どうしよう、と部屋を見渡した。
あ!
シーツとタオルケット、干しっぱなし!
…あわててとりこんだけど、
少し夜露で湿ってる…
あわててアイロンをとりだし、
低い温度で湿気をとばしていると、
脱衣場のドアが開いて。
『シャワー、ありがとうございました。
ドライヤーも、お借りしましたよ。』
紺色のジャージのズボンに、
真っ白いTシャツ。
乾かしたばかりのくせ毛がやわらかそう。
『あれ、
わざわざシーツにアイロンかけなくても
いいのに…どうせ、寝乱れますよ?』
…笑った表情が、いたずらっ子のようで。
『い、いや、違うんです。
今まで干してたから
少し夜露で濡れちゃってて…』
『じゃ、僕が続きをかけておきますから、
シャワー、どうぞ。』
『いえ、でも…』
『僕が、やっときます。
じゃないと、僕、待ちきれないですから。』
…ゥッ、ゾクゾクするよぉ…
『…じゃ、お言葉に甘えさせて下さい。
あ、武田さん、ビール、飲みます?』
運転があったから
ビーチでも飲まなかったし、
今、風呂上がりだから喉が渇いてるはず。
『あ、嬉しいなぁ、いただきます。』
…プシュッと開けた缶ビールを渡し、
アイロンをお願いして、私はシャワーを。
鏡に写った自分の裸体を見つめる。
…武田さんなら、きっと、
この傷も受け入れてくれる、よね…
私が、水着になりたくない理由。
私が、梅雨が好きな理由。
好きな人だからこそ、
隠しては生きていけない。
男の人に抱かれる時、
私がいつも、
越えなくてはならないハードル。
でも、出来ればそんな思いも、
武田さんで最後にしたいな…