第17章 ジューンブライド ~クリスタルウェディング~
…満月が海を照らす"月の道"が、
島と島をつないでまっすぐに、
こっちにむかって伸びている。
ここのレストランでは、
この"月の道"を
ヴァージンロードに見立てる
結婚式も出来るらしい。
さっきの出来事がウソのように、
それからは穏やかな時間を過ごし、
家まで送ってもらった時、
私は思い切って、勝負!?を仕掛けてみた。
『あの、武田さん…ハチミツの瓶の蓋が
どうしても開けられなくて…
すみません、お時間あれば、
開けてもらえませんか?』
瓶の蓋が開かないのは、本当のこと。
ただ、
そんなに急いで開けたいわけじゃ、ない。
でも、こうでもしないと、
なかなか自分から『寄っていって』と
言えないから…
案の定、武田さんは
『いいですよ~。でも僕で開くかな?』と
言いながら、部屋まで来てくれた。
うーん、といいながら蓋を廻しても外れず、
少しお湯で温めたり、
栓抜きでコンコンと叩いたりしてるうちに
キュルッとまわって、ポカッと蓋が外れる。
『おお!』『やったー、よかった!』
『ハチミツ、何に使うんですか?』
…突然の質問に、驚いた。
『あの、お昼にホットケーキ焼こうと
思ったのに、蓋が、開かなくて。』
『あぁ、ホットケーキ。いいですねぇ。
明日の朝食に、食べたいです。』
…え?
明日の、朝食?
私の顔を見た武田さんが、続けて言う。
『…僕、明日、休み、なんです。』
それって…
『泊まっても、いいですか?』
はい。
はい、もちろん。
もちろん、です!
…その一言が、言葉にならない。
突然の驚きと、
待ち望んだ期待と、
押さえきれない幸福で、
どんな顔をしていいかわからない私。
ニッコリと私を抱き締めた武田さんは
耳許で、言った。
『…早瀬さんを、抱きたい。』
ハイ、という言葉すら、出ない。
かわりに、コク、コクコクと、
はっきり、三回も頷いた。
あぁ。
ついに、やっと、この時が、来た…
妄想じゃなく、
一人遊びじゃなく、
ちゃんと、
武田さん本人に、抱かれる。
手を繋いだだけで濡れちゃう私(//∇//)
これから、どうなる、んでしょうか…