第17章 ジューンブライド ~クリスタルウェディング~
『武田さん!』
…自分でもビックリするほど大きな声が出た。
私も驚いたくらいだ。
武田さんはもっと驚いただろう。
『えっ?!は、はいっ?』
気持ちはまとまってない。
けど、伝えねば、という思いだけは
ほとばしっている。
『梅雨明けしたら、
コインランドリーに来なくなりますよね?』
『…考えもしませんでしたけど…
そうなる、でしょうね。』
『れ、連絡先、教えて下さい!
武田さんとの時間、
梅雨明け宣言で終わるなんて、イヤです!』
…あぁぁぁぁ、ムチャクチャ、だ。
そもそも男性に、
自分から連絡先を聞いたことなんて、ない。
梅雨明け宣言、関係ないし。
ましてや、
"終わる"なんて言葉を急にぶつけられたら
どんだけビックリすることだろう。
まだ、始まってもいないのに。
…結構、場数、こなしてたつもりなのに。
自分の恋愛ベタっぷりに、がっかりする…
『あ、あの、ごめんなさい、あたし、一方的に…』
『いいえ、謝らないで下さい。
僕の方からちゃんと言うべきでした。
早瀬さんとあまりに話があうから、
ついつい、もう僕としては、
気持ちが伝わってるような気がしてました。』
『…気持ち?』
『連絡先、交換しましょう。
そして、また、会ってくれませんか?
梅雨明け宣言のあとも(笑)』
『…コインランドリー以外でも?』
『そう(笑)
ファミレスやコインランドリー以外でも。』
『それって…』
『まだ、三回しか会ってないのに、
告白されたら困りますよね?
…もう少し、
僕のことを知ってからでもかまいません。
ゆっくり考えて下さい。僕、待ちますから。』
『いえ、待たなくていいです。』
『…え?』
『武田さん、私と、つきあ…』
『ちょっと、待って下さい。』
言葉の途中で、遮られる。
…私、私、早まった?
ガッついてる、よね…
自分で、自分のことが、わからない。
軽いパニック状態の私の耳に、
武田さんの柔らかな声が聞こえる。
『あの、僕から言わせて下さい。
僕、すごく、すごく普通の男だし、
まだ、会って間もないですけど、
早瀬さんのことが気になって仕方ない。
…僕と、つきあって、もらえませんか?』
夢、みたいだ。