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ウェディングプランナー(R18) Hi-Q

第17章 ジューンブライド ~クリスタルウェディング~



…その時、私の洗濯が終了した音がした。

浅はかな自分を見透かされ、
二冊の本の話で過ぎた時間。

あれほど
"好みじゃない男"だと思っていた彼が
昔からの友達のように見えた。

『ごめんなさい…
私、何か失礼なこと、言ったかも。』

『いいえ、すごく楽しかったですよ。
僕、鈍感だから。言いたいことは
ハッキリ言ってもらった方が嬉しいです。』

ズレたメガネを中指で押し上げながら
ハハハ…と笑う彼。

…鈍感なものか。
言葉の選び方こそ穏やかだけど、
この人は、人の気持ちを動かす
洞察力と熱量をもっている。

もう少し、話していたい。
でも、誘惑には失敗したしね…
自分の策に溺れた、ってわけか(苦笑)

彼の洗濯も終了し、
私たちは、この間と同じように
並んで洗濯物をたたんだ。

でも、この間とは違うことが1つ。
今日は、お喋りが、弾む。

話題はもっぱら、本のこと。
それでも話題は尽きることなく、
洗濯物はあっという間にたたみ終わった。

…少し、残念だ。

何か、あと1つだけ、話をしたい。
そう思ったとき、
この一週間、
ずっと彼に聞いてみたかったコトを思い出した。

『あの、』

台の上の綿ボコリをキレイに集めて
ゴミ箱に捨てに行く彼の背中に話しかける。

『はい?』

『あの本のタイトル…何て答えますか?』

彼が忘れていったあの本のタイトル。
彼も私も、それに惹かれて手に取った。

"自分だったら?"と思わず考えてしまう、
少し不思議なタイトル。

《望みは何かと訊かれたら》

『僕の望み、ですか?うーん…
煩悩だらけですけど、
今、この一瞬に限って言うなら』

なんの下心もない、優しい笑顔。

『また、あなたと会いたいですね。
そして、ゆっくりお話してみたい、かな。』

スルリと私の口からも言葉が出た。

『偶然です。私も同じ事を思ってました。』

『それじゃ、次は、食事でも。』

『そうしましょう!いつにしますか?』

『それは…
次にここで偶然会ったとき、でどうですか?
約束するより、楽しみが増えそうだ。』

…なんて余裕のある人…

ガツガツしていた
私の渇いた心に、


染みる。



『あ、僕はいつもジャージですけど、
それでもいいですか?』

『私も次から普段着で来ます(笑)』

こうして、私たちの
"次"を待つ毎日が始まった。


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