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ウェディングプランナー(R18) Hi-Q

第16章 指輪



『また来てね、アキちゃん、
しっかりしなさいよ、バカ息子!』

そんなかあちゃんの声を背に
ようやく離れに戻ったのは、
もう10時過ぎだった。

『はぁ、帰って来た~!』

鞄を片付け始めようとするアキ姉。

『なぁ、アキ姉、』

後ろから、抱き締める。
ギュッ、じゃねぇ。ギュウギュウに。

『ごめんな。そんで、ありがと。』

『ありがと、は、何だっけ?』

『甘やかさないで怒ってくれて。
それと、許してくれて。
もう、別れるって言われるかと思った。』

『…私、別れようなんて、
これっぽっちも思わなかったよ?
一緒にいたいから、
されたらイヤなことを
ちゃんとわかってほしかったんだ。
…こっちこそ、おいしいケーキをありがとね。』

『アクセサリーかバッグか何か
おねだりされるかと思ってたら、
ケーキ買ってこいって言われてビックリしたわ!
まさか、あんな恥ずかしい課題つきの
ケーキだとは思わなかったけど。』

『お金もってない人に、
アクセサリーとかバッグみたいな
高価なおねだり、しないし(笑)
でももう、こんなお使い、
2度と行きたくないでしょ。』

『ケーキ屋のおばちゃんにむかって
何回"ごめんなさい、もうしません"って
言ったことか。謝る相手が違うって(笑)』

『ケーキ屋さんもびっくりしたよね。』

『おぅ。おじちゃんも、35年の職人人生で
初めて書いたって言ってた(笑)』

…あのときおじちゃんが言ってた言葉を思い出す。

"いつか笑い話になるから、全力で謝んな。"

おじちゃん、さすがだよ。
もう、笑い話に出来た。
人生の先輩の言うことはきいてみるもんだな…

『アキ姉、』

『ん?』

『俺、自由にしてたいって思ってたけどさ、
アキ姉と暮らすのに慣れたら、
一人の自由なんて寂しいばっかりだってわかった。
もう、出ていくなんて言わせないように
俺、ちゃんと大人になるから。』

『39才、大人宣言(笑)』

『おせーな(笑)』

『遅いよ(笑)』

…家の中に、笑い声がある。
たった3日、一人だっただけで、
その幸せがどれだけ大切なものなのか
よくわかった。

結局、
アキ姉やかーちゃんの手のひらの上で
転がされてるだけかもしんねーけど、


それでいいって、
それがいいって、思う。





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