第16章 指輪
一人になって3日目の夕方。
烏野のバレーの練習が終わって
スマホをチェックすると、LINEが届いてた。
アキ姉だ!
急いで開く。
"お知らせ。
本日、この時間から先着1名様に限り、
メッセージを承りまーす(^-^)/"
…ラフな文面と絵文字。
やっぱりアキ姉、
俺のことをよくわかってる。
俺が、謝るきっかけを見失わないように、
あれこれ考え込まないように。
そう、
どうしよう、なんて考える暇もなく、
アキ姉の番号にかけていた。
『もしもし、おめでとうございます、
先着1名の座をゲットされました!
それでは、メッセージ、承りまーす。』
…声に、怒りは、感じられない。
『…ごめん。ごめん。ホントに、ごめん。』
『…何がごめん?』
『スロ屋に金、つぎ込んだこと!
簡単にアキ姉に借金申し込んだこと!
親に借りる、とか甘えたこと言ったこと!
もう、それ、全部まとめて、
大人の自覚が足りなかったこと!ゴメン!』
『もう、しない?』
『しない、絶対。今、どこいる?
すぐ、迎えに行くから!』
『…繋心が真剣にそう思ってるなら、
それを証明するものが、ほしいんだけど。』
…ギクッ。
でた。
バッグか?
アクセサリーか?
それでも、
アキ姉の存在はプライスレスだ。
覚悟を決めて、聞く。
『なんでもいいよ。何が欲しい?』
『あのね、ケーキ。』
『…は?』
『カットしたヤツじゃないよ。
まぁるいまんまのやつ。』
『どこのケーキ?何ケーキ?』
『どこのでも、何ケーキでもいい。
でも、一つだけ、条件がある。』
…この先に、どんな言葉が繋がるのか、
全く想像がつかない…
『な、なんだよ、条件って。』