第16章 指輪
一人の家に帰るのがいたたまれず、
嶋田と滝ノ上を飯に誘った。
…事情を聞いた二人には
ケチョンケチョンに責められた。
『それは繋心、お前が悪いぞ!』
『同情の余地なし、だな…』
『また、言い訳が工夫なさすぎだわ。』
『行き当たりばったりで口にして
怒られて初めて気付いたパターンだろ?』
『素直なところがかわいい♥なんて
言ってもらえるわけねーって、
わかんなかったのか?
そんな時ほど嘘も方便、だぞ?!』
んなこと、わかってんよ!
…でも、全部その通りで反論できねーよ…
『アキさんの実家、隣だろ?いねーの?』
『最初に聞きにいったけど、いなかった。
考えてみたら、俺、アキ姉の友達とか、
ゼンゼン知らねぇのな。』
『そういや、嫁の友達の連絡先なんて、
俺も知らねぇな。』
『な、嫁が出ていったこと、ある?』
島田が、即答する。
『俺は、ない。
ヤバイな、と思ったら、とりあえず謝る。
口喧嘩したって絶対に嫁には勝てねーもん。
生活に不自由すること思ったら、
とにかく謝った方がマシ。』
滝ノ上は、苦笑いしながら言った。
『出ていきそうになったことは、ある。
原因なんてもう忘れたけど…
そん時は、アクセサリーかなんか買わされた。』
『…もしアクセサリー買えば許す、って
言われてもさ、それを買う金が、
スロ屋に貯金されちまったからなぁ…』
『お前、また"貯金おろす"とかいって
もらった金でスロ屋行ったりすんなよ?』
『そんな緊急事態だったら、
ちょっとだけ都合つけちゃるから、
これ以上こじれる前に相談しろよ!』
手厳しくも愛のある親友の言葉に
ほんの少し救われる。
…この先、どうなるかは
アキ姉次第だ。
『顔も見たくない。』という言葉が
頭のなかでリフレインする。
"別れる"って言われても、しょうがない。
でも、とにかく一言、謝らせてくれ。
このまま一生、気まずい"お隣さん"暮らしは
あまりにも、耐えかねる…