第16章 指輪
蒸し暑い、夏の夕方。
まだ眩しい西陽にさらされながら
堤防の上を、人波にあわせて歩く。
地元では、この場を二人で歩くことが
"つきあってることのお披露目の場"
みたいになってるから、
張り切って浴衣を着て、
これみよがしに手を繋いで歩く
若いカップルがわじゃわじゃいる。
…下手すりゃ、こいつら、
息子でもおかしくない年齢だよな。
烏野の生徒も、どっかにいるんだろーな…
そんなことを考えていたら、
横でアキ姉が
『高校生カップル、かわいいねぇ。
高二の頃、初めての彼氏と、来たなぁ。
もう…25年前?ぎゃぁ、昔すぎる!』
とかなんとか言っている。
…俺は、2年前に見たな。例の彼女と。
わざわざ、言わねーけど。
地元の恋愛は、思い出が被って煩わしいわ…
そんな気持ちを振り払うように
明るい声で言ってみる。
『なんか、こういう所来ると、
いかにもつきあってます、って感じだな。』
『だって、そうだもん。実感わかない?
私たちも手、繋いでみる?ん?ほらほら。』
『やめろ、暑苦しい!』
嫌がらせのように
わざとしつこく絡ませてくる
アキ姉の手を払い除けながら
並んで土手に腰を下ろした。
目の前のカップルが、イチャイチャしてる。
大学生くらいだろうか。
…こいつら、花火見たらラブホ直行だろうな。
浴衣脱がせるの、楽しいだろうけど、
明日、着る時のことも考えろよ…
いかん。
考えることがオッサンだ…