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ウェディングプランナー(R18) Hi-Q

第16章 指輪



あの日以来、どこに行ってても、
『今から帰る』か『寄り道する』の
電話をするようになった。
いわゆる"帰るコール"というヤツ。

なんか、急に所帯染みた気がする。

でも、
今まで全然気にならなかったけど、
自分がそうするようになってみると、
皆、同じ事してるんだな、と気づく。

別に、その電話で
たくさん話をするわけじゃない。

『はいはーい、気を付けて。』か
『帰りに、牛乳買ってきて!』
のどっちか、みたいな。

たったそれだけで、
お互いが気持ちよく過ごせるなら
いいじゃん、という感覚は、

以前、西谷が言っていた
『目玉焼きなんて、
醤油でも塩コショウでもどっちでも
うまいンすから。』
というのと同じなんだろう。

普段の暮らしも、
相変わらずアキ姉に頼ってる感が大きい。
でも、さすが、結婚経験者、というか

『私は繋心のお母さんじゃないからね!』

…そんなことを言いながらも、
手際よく家事をやってくれるから、
ついつい甘えてしまう。

例えば
『歯みがき粉、使いきる前に言ってよ!』
とか
『ズボンとパンツ、一体化させたまま
洗濯出すの、やめて!』
とかは、何度も何度も言われてて、

言われた時は
『ごめん、わかった。気を付ける。』
と、本当に、思うんだけど、

ついつい、またやってしまう。
まぁ、その繰り返し、みたいな生活だ。

アキ姉も、
本気でそれを改善させようと
思ってるわけじゃないみたいだし。

文句言うのもコミュニケーション、
みたいな。

日向と影山がよく
『や、やんのかぁ?』
『ウルセェ、ボケ!』
と言い合っていたような感覚。

母ちゃんが父ちゃんのことを
グズグズ文句言いながら
かいがいしく世話を焼くのも、

前は、
『文句言うならやらなきゃいいじゃん』
と思ってたんだけど、
そういうことじゃねーんだな、多分。

本気で文句言っていた、というより、
文句言うことが、
暮らしのスパイスになってんだろう。

黙ってやってちゃ、
召し使いと一緒だ。
文句言える間柄だからこその安心感、

みたいな感覚なんだろうな、と思う。

…それが分かるようになっただけでも、
俺としては大進歩じゃねーか?

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